西条より
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破綻論理/西条からの誕プレ
西条のハリポタオリキャラと。混合学園企画もやってるんでリンクより西条のサイトご確認ください。
<出演>
アリス・フィスナー(HP)
風早陸(庭球)
アキ・ポッター(HP)
アクアマリン・ベルフェゴール(HP)
ユアン・デイビス(HP)
京極淺葱(銀魂)
風に乗って転がってきたボールに、眉を寄せた。俺の足にコツンと当たり止まったそれは、まるで見知らぬ幼児がトテトテと歩いてきて俺の足に抱き着き、にこっと笑った時の、あの微妙な心境と同じものを想起させる。
肩に掛けているエナメルが落ちないように注意しつつ、身を屈めた。薄汚れたバスケットボール。体育館から転がってきたのか、一部の馬鹿が外に持ち出したのか。屋外にあったからかどこかざらつく感触に顔をしかめつつ、軽く汚れを払い落とす。
誰もいない体育館の中は、やけに広々として見えた。しかし何故か物悲しさも共に沸き上がるのは、どういう訳だ。意味分かんねぇぞ、俺の心。時刻は放課後だが部活動生の姿がないのは、今がちょうどテスト期間中だから。
靴を脱いで、靴下のまま体育館に入る。
ダムッ。
無意識にボールをついていた自分に、驚いた。右の手の平に触れる、固いゴムの感触。
ダムッ。
手首を柔らかく使う。ボールを抑えつけるんじゃない、自然と手の中に吸い込まれるように。
小さく笑った。エナメルを体育館の隅に置くと、袖をまくり、ネクタイを緩める。
軽く膝を曲げた。
身体全体を使って、伸び上がるように放る。
「……あ゛っ!?」
うわ、外した。しょーもなっ。
テスト期間だから身体が鈍ってたんだと言い訳しつつ、走って取りに行く。レイアップは入ったことに、悲しいが少しほっとした。
ミドルが殆ど確実に決められるのが、唯一の俺の特技なのに。
躍起になって、シュートばかりを繰り返す。数をこなすにつれて入る確率は上がるが、しかしボードに当たって、とかゴールに当たって、とか、そういう微妙なものばっかりだ。
ふと、アキのことを思い出した。
あいつの細腕じゃ、きっとボールすら投げられねぇに違いない。フリースローラインから投げて、ゴールに掠るかすら怪しい。
ダムッダムッダムッ。
ボールをついた。
そういや、よくデイビスはスリーラインから入るよな。あいつも細っこい身体してる癖に。あいつが試合出ると、いっつも女子達の声援がハンパねぇんだ。チームの志気も上がるし俺はどうでもいいんだが、しかし俺やアキ以外と接する時キャラが変わるのは、正直気持ち悪い。何でわざわざ優等生演じるんだ。そのままでも十分モテるだろうに。
後ろに下がった。スリーラインに爪先を掛ける。
ゴールが遠い。届く筈もないと思いつつも、投げた。当然の如く、ボールはゴールに掠りもせずに落ちる。
「力任せで放ろうとすんのがあかん。スリーは、もっと身体の力抜いて、全身のバネ使うように投げるべきなんや」
関西弁に、振り返った。目を細める。
背の高い人間だった。上背だけなら俺よりあるんじゃないのか。身長の割に細い体躯。身長のせいで一瞬判別し損ねたが、女子の制服を着てるから女子生徒だろう。まぁ京極浅葱のような例外もいるから一概にそうとは言い切れないが。
すっきりとした短髪に、凛々しい、という表現が似合うような顔立ち。さぞかし同性にモテそうだ。アキと真逆だな、これじゃ。あいつもこのくらい切ればいいのに。
「自分、アリス・フィスナーやろ。有名人さんやから、よう噂で聞くわ。バスケ、上手いんやて?」
「……だったら何だ」
おぉ怖、と彼女は笑った。
「ウチと1ON1、やらへん?」
俺は口を閉じて彼女を眺める。一拍置いて、返事をした。
「やらねぇ」
「えー、ケチやなぁ。そら何で?ウチが女やから?」
「馬鹿か、『あの』風早陸に1対1しようなんざ誰が思うかよ」
負けるのは、嫌いだ。だから勝てる勝負しかしない。喧嘩も同じだ。
自分が勝てるか勝てないか、その見極めが何より一番重要で。
「何や、ウチの名前、知ってたんや」
風早の声をシカトする。阿呆くさ、と、バスケットボールを床に思いっきり叩き付けた。高く跳ね上がるボールに戸惑った顔をしながらも、反射的にボールに手を伸ばす風早。俺は隅に置いていたエナメルを取り上げると、出口に向かった。
「……って、え、ちょっ、最後まで片していきぃや自分!」
「あー、頼む」
体育館から出て、靴を履く。すぅっと髪を揺らす風に、目を細めた。少し湿っぽいシャツに軽く風を通すと、歩き出す。
「テメェ人に片付け任せるとはどういう了見じゃー!バスケ愛しとんなら当然の行為やろ!?しばくぞボケェ!」
なんかうっさいの来た。振り返るのも面倒だ、と思っている内に隣に並ばれる。……何で来るんだよ、おい。
隣に並ばれると、身長の高さがより際立つ。一体どんだけ高いんだコイツ、俺も低くはない方だがコイツはそれ以上あんぞ。
アキと並んだら、さぞかし面白いことになりそうだな。
「なーなー自分、幣原秋ってのと親友なんやろ?」
と、ちょうどいいタイミングで放たれる質問。よく女子から聞かれるな、これ。次に多いのは「デイビスくんと友達なんでしょ?」だ。そんなにあいつらに近付きたいなら本人に直接話しにいけよ、意味分かんねぇ。
「だから何だよ。あいつが好きってか?悪いが無駄だぜ、あいつ彼女いるしな」
激ベタ惚れの彼女がな。
「あっはは、何言うてんのん。ウチあないちっこい人彼氏は無理やわー」
さらりと残酷なことを言って、けらけら笑う風早。
「そーやのーて、アキ先輩からアンタの話聞いたんやわ。おもろい奴やーて、一度話してみればーって」
「……ふーん」
どうでもいいが、アキには先輩を付けるのに俺は呼び捨てなんだな。
「もう喋ったから、いいだろ。俺と話しても何も面白くねぇぞ」
「そんなことないで?もうおもろいトコ、見せてもろうたし」
「は?」
思わず風早を見る。と、奴はにや〜っと悪戯っぽい表情を浮かべた。うわ、殴りてぇ。
「不良やと学園で恐れられとるアリス・フィスナーが、外に転がっとったボール戻したるーなんて、なんや可愛らしいやないか。不良がネコ拾ってんの見る並にときめいたで」
思わず足を止める。駄目だ、こいつは女子だ、殴れねぇ。代わりに明日アキをどつくことにしよう。再び歩き出した。
「覗き見なんて趣味悪ぃぜ、しかも俺なんてよ。やんならデイビスとか、もっといい奴にしろよ」
「いやいや、アンタよぉカッコイイって女子に言われよるよ?」
「は?」
いやねぇよ。初耳だぞ。
「……誰かと間違えてんじゃねぇの?」
「ちゃうちゃう、れっきとしたアンタのことや。まぁアキ先輩やデイビス先輩程やないけどさ。そっか、あの二人が近くにおんなら、気付かんのも納得やわ」
うんうん、と一人で納得し頷く風早。俺はため息をついて、肩を竦めた。
「くだらねぇ」
「そう?モテるって素晴らしいことやないか、羨ましいで」
「好きでもない奴から好意寄せられたってうっとうしいだけだろ」
「うわ、なんて贅沢な考え方」
むっとしたように風早は俺を睨む。と、小さく息をついた。目を伏せ、自嘲的に笑う。
「……ウチ、こないデカくなかったら、もっと可愛かったら、人生違うたかもしれんなぁ、って思うねん」
ちらりと、風早に目を向けた。
「例えばさ、アキ先輩の彼女の、アクア先輩?もうさ、お人形さんみたいに可愛いやん?髪長いし小さくて華奢やし物静かやし、いかにも女の子ーって感じやん?アキ先輩も、そら背ぃはちっこいけど可愛い顔しとるしさ、似合いのカップルやないの」
「…………」
「なーんや、最近皆急に色気づいてきよーて、なんか寂しいねん。取り残されてる気分?ふとした瞬間とか。でもほら、ウチってデカイしガサツやし口悪いし、好いてくれる人なんておれへんやろーなー、なんて考えたり……」
「…………」
「……なーんてな!ごめん、らしくもなくしんみりしてしもた、忘れてくれん?そうやこん前な、秋先輩と話した時な」
「風早」
右手を伸ばした。ぽん、と風早の頭に手を乗せる。
「別に、焦る必要ねぇだろ。誰が付き合おうだのなんだの、どうだっていいじゃねぇか。アキ知ってんだろ、お前。あいつが何年片想いしたか知ってっか?」
乱暴に風早の髪を掻き混ぜた。……自分より背の高い相手にこれをやるのは、正直無理がある、反省。
「お前がベルフェゴールみたいになろうとしても、無理だろ。背、高くていいじゃねぇか。女の子っぽくなくていいじゃねぇか。俺は、ベルフェゴールみたいにおとなしい奴よりは、お前みたいに活動的な奴の方が好きだけどな」
照れたように頬を赤くして、風早は俯く。……ほら、可愛いとこ、あんじゃねぇか。
「お前はまださ、いい人に巡り会えてない、ただそれだけなんじゃねぇの?大丈夫、いつか必ず、お前のこと好きって物好きが現れるからよ、待っててやれよ」
頭から手を離した。風早は髪を気にしたそぶりで、軽く自分の頭に触れ、髪を整える。
「……じゃあ」
「あ?」
頬を染め、視線をうろうろさ迷わせた後――意を決したように、風早は俺と目を合わせた。
「誰ももらってくれなかったら、先輩、もらってくれますか?」
思わず笑った。と、肩をどつかれる。
「本気で聞いてんやで」
「悪ぃ悪ぃ。ははっ、俺なんかでよければ貰ってやんよ。有り得ねぇと思うがな」
小さく、風早も笑う。
「ほな、アンタも物好きや」
「お前が言ったんだろ?」
笑って、前を向いた。
「本気にすんで、ウチ」
「暇な奴。好きな奴とかいねぇのかよ」
「……今、思い当たった、かな」
そらよかった、と肩を竦める。
三叉路のところで、風早は止まった。ぴょんと身軽に振り返ると、笑顔を見せる。
「ほな、ウチこっちやし、ここでサヨナラや。おおきにな、先輩」
軽く手を上げて答えた。
風早は大きく手を振ると、走り出す。見えなくなるまでその姿を見送ると、空を見上げた。
知らず、息を吐き出す。
「彼女かぁ……」
あいつが彼女なら、さぞかし退屈しねぇだろうな。毎日飽きもせず騒々しくって、疲れそうだ。
でもまぁ、楽しそうだよな。
俺の背よ、伸びろ。
彼女よりも小さいのは、耐えれそうもない。
「……阿呆らし」
本気にする、だなんて、お前こそその言葉、冗談だろ。
俺が本気にして、どうすんだ。
「ははっ」
空に、笑った。
テスト勉強で胸の中にわだかまっていたものが、すっかり流され、消えている。
気分がいい。
「さて、あと二日、頑張りますかねぇ」
誰かに言い聞かせるように、呟いた。
テスト終了まで、あと二日。
破綻論理/西条に
誕生日祝いにいただきました!!
ありがとう\(^o^)/
そしてテストはリアルにあと二日!!
20111002
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