ツイッター風なう
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どうもみなさんこんちくわ。海原祭なう。風早です。いまバスケ部のほうのフリースローのアトラクションの店番しとるとこ。結構盛況みたいで嬉しいです。高校とか大学のOG、OBの先輩が来てて、大分賑やかになっています。




ウチは客を捌きつつ、スタンプを押す係。フリースロー自体そんな難しくないし、さっきも言ったように経験者も多いから簡単に景品取られてる。なんや悔しい。




「慶次兄なんでおるん…」



「なんでそんな顔をするんや、陸。イケメンな叔父さんに会えて嬉しゅうないんか」




ぶっちゃけ嬉しゅうないわぁ、というと叔父さんはウチにスリーパーかけてこようとしたから慌てて避ける。




「ちゅうかいつまでバスケ部の場所おんねん、テニス部はどないしたん」





そう、何を隠そうこの人は我が立海附属中学において、もっとも地位を持つ男子テニス部の顧問をしている。


そして彼はウチの父の年の離れた弟に当たる。叔父さんと呼ぶのは嫌がるので、兄を付けて呼んでいる。ウチには大学生の兄がいて、慶次兄はもう一人の兄のような感じだ。父も、弟というよりは、長男のように叔父である慶次兄を可愛がっているので問題は無い。ちなみに歳は32である。


我が家は父は元日本代表、母は父の高校時代からのマネージャーで主婦兼スポーツトレーナー、兄は大学バスケ界のホープで将来プロ入りするだろう選手、という超バスケ一家だ。



父が日本代表であったのに、なぜ弟の慶次兄がバスケじゃなくテニスをしているのかというのは、直接本人から聞いたことは無い。予想はついているが。





「陸、お前そろそろ店番終わるだろ」



チビッコ相手にゴールの仕方を教えていると、慶次兄が後ろから声を掛けてきた。





「ああ、もうすぐ終わるで。なん、行きたいとこでもあるん?」




「お前人前ではタメ使ったらアカンて」




関西弁なのもあり、ついついタメ口になってしまう。しかし腐っても教師。案外細かい。ちなみに慶次兄の担当教科は社会科、専門は世界史だ。





「次テニス部付き合ってや」



「ああ、ストラックアウトと甘味屋でしたっけ。そういや行く言うたし、ええですよ。」





一緒に廻ろうといった友人もクラスのタイムテーブルの関係でまだ合流できないし。


暫くして次の担当である後輩が来てくれたのでバトンタッチした。また様子を見に来ようと思う。参加してくれた見知ったOG、OBの先輩に挨拶をしてアリーナから出る。



ほとんど2mの慶次兄と二人で歩くとどうしても目立つ。父は194cm、慶次兄は198cm。祖父もでかいひとだった。ウチもこのペースだと多分190いくんじゃないかと思う。ちなみにウチの兄はなんと203cmである。道すがらに話かけた。




「海林館行くん?」




「おん。タダ券くれ言うたら幸村に睨まれたわ。」




「まぁ、こないな時だけ顧問特権使われてもなぁ」




「えぇ、陸ひどない?」




「せやかて、大学の人とコーチの人はしょっちゅういてはるけど、慶次兄が練習見に行っとるところ見たことないわ」




そう、この叔父がめったに練習を見に行かないことで学内でも有名な話だ。さすがに大会前は顔を出していたようだが。




「全国もサボったって聞いた」




「あ〜。別にサボったわけとちゃうんやけど」




あんま人多いところ行きたないねんもん。そう呟く叔父の横顔がどこか寂しげだったので言及するのを辞めた。




「さぁ、着いたで」




「うわっ、人多いな」




2人で掻き分けて進む。無駄にでかい慶次兄の後ろは楽だ。




「お〜、柳。着物似合うとるやないか」




「新川先生、やっと来られたんですね。」




風早も来てくれたんだな、と言って微笑を向ける柳先輩。後ろで女子の集団が黄色い声をあげたけど気にしない。


柳先輩は深緑の浴衣にくすんだ茶色の帯と、中学生にしては渋すぎるんじゃないかと思う出で立ちだったが、さすが柳先輩。涼しげな顔をして着こなしている、余裕綽々って感じだ。


キョロキョロと周りを見回せば、もじゃっている頭を発見。柳先輩とは対照的に、少し遊んだ感じの市松模様の甚平に、結んだ前髪と、キャラクターもののお面を斜めにつけている。まぁらしいっちゃらしい。




「出店のほうは良いのか?」




慶次兄と話終えたらしい柳先輩が声を掛けてくれた。先輩は自分の持ち時間は終わってるらしい。




「はい。ウチも自分の時間は終わりました。先輩もお疲れ様です。浴衣似合ってはりますね。」




「ありがとう。俺は家で着る機会も多いからな」




今、新川先生が裏口から丸井にあんみつを貰いに行っている。と柳先輩がこそっと言った。




「さすが慶次兄…」




「話は変わるが、足はもう大丈夫なのか」




サポーターが巻いてある足をちらっと見て言う。先日包帯を取ったばかりだ。今日は松葉杖を持ってきてない。




「やっと一ヶ月過ぎましたから。包帯も取れたんですけど、また暫くはリハビリです。」




包帯が取れて、膝の間接を曲げたときの痛みは忘れない。怪我をしたときは五寸釘を打たれたようだったと比喩したが、その比ではなかった。痛みで体が硬直した。




「正直、常に痛みが伴っとるっちゅうか、今もそんな感じなんですけど、弱音言っとる暇ないみたいなんで」




冗談めかして言って肩をすくめれば、柳先輩は小さく笑った。




「風早は強いな」




「へ?いや、そないなことあらへんですよ、」




「強いさ」




ちょ、そないなこと言われたら照れますよっ。とかなんとか。とりあえず誤魔化した。先輩は素直なのか、それも計算なのか、直球で物を言うことが多い、と最近話してて思った。




「れ〜んじ、」




そう言って柳先輩の頬に刺さる指。




「精市か」




微笑む幸村先輩は、青味がかった白に金魚が描かれているの浴衣に、白い線の入った紺の帯。幸村先輩の儚げだが芯の強さを感じさせる容姿と見事に調和してる。


後ろから先程とは違った黄色い声が聞こえてきた。お二人ともうらやましいほどに腰が細く、どことなく色気が漂っている。ファンがつくはずだ。




「やぁ風早さん」




「どうも、お疲れ様です。幸村先輩。」




二三言葉を交わしたが、幸村先輩は厨房に呼ばれていってしまった。




「浴衣ええな」




「なんだ、風早はこういうのが好みなのか」




いつの間にか柳先輩はノートを広げていた。




「げ、データっすか」




「もちろんだ。風早は学内でも有名だからな。データの取りがいがある。」




「うわ、ほんまですか。つまらんと思いますよ」




「そんなことはない」




話している間も柳先輩の手は動いて、なにを書いてるのかと覗きこんだが「企業秘密だ」と言って見せてくれなかった。




そうこうしてたら慶次兄が両手にあんみつを持って帰ってきた。慶次兄は柳先輩と話したあとウチに、行くで、と言って歩き出した。




「ほんなら先輩、また」




「ああ、またな」




手を振ってくれる先輩は、優雅という言葉がぴったりだ。

ウチは慶次兄のデカイ背中を追いかける。




「あ、オチない」

まぁ、そんな日もあるか。






20110810

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