暑だから夏いねん
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さてはて。ウチはいま海林館、普通の学校で言うところの講義会場みたいな、いくつかのホールがある建物に来ている。立海の文化祭、ここでは海原祭のことだけど、その海原祭でももちろんこの海林館は使用される。



そして今年使用するいくつかの部でも特に目立っているのが、テニス部。これは実績でも容姿でも、という意味で捉えてもらいたい。そしてウチは松葉杖にショルダーバック(しかもアンコ入りの)を提げて海林館のホールにいるわけなんやけども、現在開いた口がふさがらない、という言葉を身にしみて感じているところである。



ウチはテニス部にいる生徒会の会計の先輩に纏めた報告書とついでにさっき預かってきたアンコを届ければ任務は終了なのだ。ウチかて、暇やない。さっさと終わらしたいんやけど、なんなん、この状況。ふざけとるんちゃうか。



どういう状況かっちゅうと、テニス部はにこにことした部長の幸村さんが、それに対してオタクっぽいって言ったら失礼なんやろうけど言葉を選ぶ時間ももったいないからあえて言わせて貰う、オタクオーラが滲み出てしょうがない、漫研の部長が(同好会だから会長か?)にらみ合っているのだ。


別にどうっでもええことなんやろうけど、漫研部長の汗半端ない。対する幸村先輩はニコニコと涼しそうなのに、どう言うこっちゃ、って言いたくなるけど、言ったらコッチにまで被害が及ぶ気がめっちゃするから、言わん。幸村先輩の後ろに見えとる黒いオーラも気のせいやと思う。頭で暑さいかれてんねん、あ、ちゃうちゃう、暑さで頭いかれてんねん、こりゃホンマやばいわ。


ウチはとりあえず松葉杖で器用に前に進みながら相変らずモジャってる頭をした友人のもとに行った。




「赤也、」




そう言えば赤也は振り返って



「陸じゃねぇか、なにやってんだ?」



と聞くのでこっちが聞きたいわ、なんやねんあれ、と言っていがみ合ってる各部の部長同士を顎で示した。




「なにいまさらもめてんねん。」



「なんかよくわかんねえんだけどよ、テニス部が使う机をあいつらが取っていったんだよ。で、ムカツク言い方しやがるし、」



あのクソキモオタ、まじ汗半端ねぇじゃん。



「あ、それウチも思ったわ。」




そう言って二人で言い合ってると、幸村先輩がキモオタを言い負かしたらしい。キモオタ、もとい漫研部長は奇妙な呻き声をあげながら海林館を去っていった。それにしても汗が半端なかった。何回言うのかってつっこみはいらんで。




「で、お前なにしにきたんだよ。」




赤也がそう言ったので、やっと本来の仕事を思い出す。




「せやったわ。生徒会の会計してる先輩ってどちらさん?」




テニス部の先輩は名前と顔を一致させるくらいには知ってるけど、だれが何組でだれの血液型は何型で、なんてことは知らない。知っている必要がない。ウチのクラスのテニス部ファンな子達は、どれだけテニス部を知ってるかを競っていたが、ウチからしてみれば、なんなん自分ら気でも狂ったんと違うか、って言いたくなる様な話だ。




「柳先輩のことか?お前知らないっけ?」




「柳先輩やったんか、確かに生徒会似合うわー。顔も知っとるし、話したこともあんねんけど、委員会までは知らんかったわぁ。」




そう言うと赤也はまぁ、そりゃそうだよなって言って、常に帽子を被ってることで有名な真田先輩と話していた柳先輩を呼んだ。



「何か用か?」



「俺じゃなくって、コイツっす。」




赤也がそう言ってくれたので、ウチはバッグから書類を取り出す。




「お疲れ様です、先輩。仕事増やすようで悪いんですけど、コレ各部活動の会計報告書です。ある程度まとめたんで、」




そう言って先輩に手渡す。




「ああ、ありがとう。助かった。」



「いーえ、仕事ですから。」




そう言って笑えば、柳先輩も笑った。




「さっきのキモオタ、じゃなかった漫研の部長とはなにがあったんですか?」




「大したことはない、机が足りなかったらしくテニス部の使うスペースから取っていったらしい。」




日ごろからあまりよく思われてないからな、あの部からは。そう言って柳先輩は嘆息した。



「あ〜、イケメンは辛いっすね。」




赤也がそう言ったので、お前の代からは大丈夫なんちゃう、と言えば殴られた。いてぇ。




「ああ、それから預かってきたのがあるんですけど。」




ショルダーバックからアンコの入ったパックを出す。




「さっきアリーナの方に行ったら近藤から渡してくれって言われまして。」



そう言って柳先輩に渡した。



「近藤からか、これは上質だな。」



「へぇ、わかるんですか。アンコなんて全部変わらんように見えますけど。」



そう言うと柳先輩は口の端を上げて



「近藤の家の和菓子屋は結構な老舗でな。俺も幼いころから好きだったんだ。」



これはその中でも上級だと言って柳先輩は微笑む。



「俺も小学校のときから知ってたぜ。」



「へぇ〜。近藤ん家そない有名やったんか。」




今度連れてってやー、と言えば今度なーと言われたので、期待しとこうと思う。




「ちゅうか大変やありません?甘味屋とか。いつもは食物系は高校がするのに。」




食物系は調理部か高校の希望クラス数点のみで、部活動がする、とくにテニス部みたいな部活が食物系の出店をするのはものすごく稀なことらしいのだ。そういう意味を込めて、柳先輩をみやれば、柳先輩は




「丸井の強い希望でな。最初はクレープだったんだが、お年寄りが来ることも考慮して甘味屋になった。」



「へぇ、ああ、そういえば丸井先輩はスイーツコンテスト?みたいなので優勝されてましたっけ。」




期待しときますね、と言うと柳先輩は、ああ食べにくるといい、と言ってきたので相当自信があるのだと思う。さらに話を聞いていくと、従業員となるテニス部は和服を着るらしい、たかが文化祭でようやるなぁと思ったけど口には出さずに、柳先輩似合いますわー、と言った。もちろん本心だ。てかテニス部ファン大喜びだなそりゃ。




「じゃあウチはそろそろお暇しますねー」




「おう、そういやバスケ部はなにすんだ?」




「ああー、なんやったかな。フリースローみたいなやつ。」




おいおい、お前自分の部活の出店ぐらい覚えておけよ、と後ろで赤也が言う声が聞こえたがスルーしておく。





20110717

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