今日も空は
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どんだけ場に馴染めないんだ、自分。かのカリスマおネエ美容師も驚くだろうよ。…ちょっと古いか。
はぁ、
皮肉なほどに快晴な空を見上げては今日何度目か知れないため息をついた。
* * *
「沖縄に行くぞ!!」
「はぁ?」
遡ること数ヵ月、家に帰ってきた父が高らかに言い放った。突然なに言ってんの。そのときは、構いもしなかったが、朝起きてびっくり。部屋がすっからかん。あわてて父に問うと、
「沖縄に行く、って言ったろ?」
* * *
そうして意気揚々、とまではいかないが沖縄にやって来た。のは良いが…
「ここ、外国でしょ…」
意味のわからない言語に、違いすぎる習慣。
本土からの転校生が珍しいのか、はたまた中学最後の年で編入したのが珍しいのか、最初のうちはみんな構ってくれた。うまくやっていけると思った。
「…そりゃそうだよなぁ。」
「どうしました?」
「え?ああ、木手くんか…」
隣の席の木手くんは、標準語なんだが妙なアクセントでしゃべる人で、言葉が通じるからか私は彼に変な安心感を抱いていた。
「もう習い終わってるからといって、授業を真面目に聞かないようじゃ、そのうち痛い目見ますよ。」
わかってるっつの。軽く肩を竦める。進度が随分と違うらしく、私は今の授業内容は当の昔にならっているのだ。
授業が終わると、教科書をしまいまた頬杖をつく。教室内で女の子達がいくつかのグループに別れて話をしているのが分かる。
ああ、憂鬱。
三年生ともあらば、特に女子はいくつかの仲良しグループに分かれる。すでにグループが出来ているのに、それに入っていく気はない。まあ、そのぐらいの覚悟はしていた。また空を見上げる。この快晴が午後からは大雨に変わるのだそうだ。もちろんちゃんと傘を持たされた。父はもうすっかり沖縄に溶け込んでいるようで、羨ましい。
そう言えば隣の席の木手くんは最近は毎日のように金髪の男子と話してる。ちらっと隣を見る。おお、今日も綺麗な金髪だ。
パチ、
金髪の彼と目があった。そうするとちょっと驚いた顔をされて、フイと顔を反らされる。
え、私!?
私、なんか嫌われるようなことした?!
一人、地味に焦っていると、
「ミョウジ、次は数学ですが予習はしてるんですか?」
「え?あ、うん。してる。」
衝突に木手くんが、話しかけてきた。吃驚しながらも答える。
そうですか、と彼は言う。
「もー、やー聞いとるんかー。えいしろーっ!!」
金髪くんが叫んでいる。仲いいなぁ。そう言えば、木手くんの下の名前は永四郎だったか。
「うるさいですよ、平古場くん。少しは大人しくしたらどうですか。」
「やーが大人っぽすぎるんだばぁよ。」
ほぉ。金髪の彼は平古場くんと言うのか。私も木手くんは大人っぽすぎると思うぞ。
「普通です。もうチャイムが鳴りますよ。」
そう木手くんは言うと、教科書を取り出して準備をしだした。平古場くんとやらは焦りながら、
「早く教えろさーっ。ふらーっ!!」
と、叫びながら出ていった。
賑やかな人だなぁ、
「彼は騒がしいだけですよ。」
どうやら口に出していたらしい。
「でも、あんなやって話しに来てくれるだけいいよ。」
木手くんはため息をついた。ため息をつきたいのはこっちの方だ。
「あなた、自分から行動せずに何を言ってるんですか。」
しっかりと目線を合わせ言われてしまった。ちょっとドキッとしたぞ、おい。平静を装いつつ、言う。
「そうだよねぇ。こっちから行かなきゃいけない、よねぇ。」
行けたら良いのにねぇ、
木手くんはまた深いため息をついたみたいだ。
「それと、あなたはもっと周りを見たほうがいい。なぜ気付かないんですか。」
「はい?」
何に気付けと言うんだ?わからなくて、木手くんの横顔を見つめていると、
「まあ、心配しなくとも大丈夫ですよ。」
半ば呆れながら言ってきたのが勘にさわったが、私もそこまで短気ではない。木手くんがそう言ってくれるなら、大丈夫だろう。
その後の彼の、
「なんて鈍いんだか…」
という呟きは、やけに体育会系な数学教師の「席つけー。」という声に紛れて聞こえなかった。
その翌日、おとなしめな女の子たちのグループが話しかけてきてくれた。一緒に移動教室もした。
「ミョウジさん、面白いね。」
そう言って笑ってくれた。
どうやら私は、相当クールで冷たい女だと思われていたらしい。聞きなれない方言に、あまりしゃべろうとしてなかったからだ。
おかげさまで、友達ができました。
そう木手くんに報告すると彼は、そうですか、とだけ言って目線を逸らした。
「えいしろーっ!!」
いつものように綺麗な金髪をなびかせて、平古場くんがやってきた。
「えいしろー、今日な田仁志のやつがよぉ───」
言うだけ言って帰っていく。相変わらず賑やかな人だ。
「早く気付いてもらえませんかねぇ。」
そう隣で木手くんが言っているけど、なんのことだろうか。
私はまた頬杖をついて空を見上げる。
もうため息はでない。
沖縄の空は今日も青いです。
* * *
「はぁ…、なんで気付かないんだばぁよ。」
「あなたは俺にいろいろ言ってくるだけで、彼女に話し掛けもしないでしょう。当たり前ですよ。」
そう言ってやると、平古場はタオルに顔を埋めた。彼がこんなに悩むのはいつ以来だろうか。彼は試合で負けてもこんなにも落胆することはないのに、
「重症ですね…。」
平古場が毎日俺のところに来るのは隣の席のミョウジに会うため。
そんな単純なことなのに、鈍感な彼女は気付かない。
「はぁ…。」
俺に彼女のため息が移ってしまったようだ。ともかく平古場には調子を戻してもらわなくては困る。
「一肌脱ぎますか。」
そう言って俺は、相変わらずタオルに顔を埋めている平古場のもとに向かった。
見上げた沖縄の空は、今日も青い。
***************
平古場は隣の席の主人公目的で木手のところに通い詰めるんけど気付かない主人公。
…あれ?
なんでこんなことになったんだ?
一応、蓮ちゃんにリクとしてネタを貰ったんだけどね。
ごめんね、秤の文章力じゃこれが限界だった。
091230 MANY THANX!!
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