1月4日
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新年明け、今日はやっと落ち着いた雰囲気を漂わせる1月4日。冷蔵庫にこれでもか、と詰め込まれてあったご馳走はいつの間にか跡形もなく消え去った。なんだかお祭りのあとのような寂しい気持ちと、新年を迎える少しの高揚感と、溜まりに溜まった冬休みの課題だけを残してお正月は行ってしまった。
ピンポーン、
「はぁーい、」
弟たちにせがまれた両親は少し遠くのショッピングセンターまでゲームを買いに出掛けてしまった。
今は家に私だけ。
来客は全て対応しなければならない。洋服の裾を正し、鏡で顔に何かついてないか確認する。そして玄関へ向かった。しかし正月明けのこんな時に訪ねてくるとはどんな人だ?せったくこたつでぬくぬくしてたというのに。
ピンポーン、
「あ、すいませーん。いま行きまーすっ」
ずいぶんとせっかちな人だなぁ、とまだ顔も会わせてない客人に一方的な感想を持った。
ガチャ、
「どちらさまで…。えっ、きゃっ。」
ふわり。
腕を強引に引かれると抱き締められた。
「え…蔵、くん?」
「…アホ、出るん遅いわ。」
そう言うと彼は私の肩に顔を埋めた。
「ど、して…?」
蔵くんの家は私の家と随分と遠く離れている。いわゆる遠距離恋愛ってやつだ。蔵くんの部活のこともあって、長期連休ぐらいしか会えない。冬休みは年末年始は家のことで忙しいからって諦めていたのに。
「今日、ナマエの誕生日やろ。」
「あ…、」
そうだ。今日は私の誕生日である。毎年のようにお正月と同じように過ぎていく、私の誕生日である。
「だから、ナマエに会わなあかん思て。」
お年玉使ってもうたわ、そう言って照れたように笑う蔵くんは誰よりもかっこよくて、誰よりも愛しく思った。
「蔵、くん…。」
「え、ちょ、なんで泣いとるん?俺来たらあかんかった?」
あわてて首をふる。
「嬉し、くて…」
嫌なわけないじゃないか。大好きな恋人がはるばる祝いに来てくれたのだ。私は幸せものだ。
「…さよか。ナマエ、」
顔をあげると、視界が暗くなって唇に柔らかい感触。
「2010初キスやな。」
そう言って満足そうに蔵くんは笑う。
もう、かっこ良すぎだよ。
こんな彼氏を持った私は世界一の幸せものだ。
今夜はナマエの部屋泊まらせてもらうで。
えぇっ!?
大丈夫、お義母さんには了承済みや。
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1日遅れましたが友人に捧げます。誕生日おめでとう。白石はさらっと「お義母さん」と言っちゃいそう。秤にしては珍しく甘くなったかなとか。
100105 MANY THANX!!
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