青春だるい幸村と仁王
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「中学生くらいのカップルがコンドーム買っててムカついた」

植え込みの奥の日陰で涼んでいた俺に向かって、開口一番そう言った幸村。柔和な顔に似合わずコンドームなんて言う幸村は、手に小さな袋をぶら下げている。

「そらムカつくのぉ」
「だろ。俺たちがコートの上でハァハァやってるときに、あいつらはベッドの上でハァハァやってんだよ」

そう言って俺のとなりに座り込む幸村がぶら下げていた袋の中身は、スポドリとカロリーメイト。健全すぎてコンドームとはえらい差である。ちょうだい、と手を出せばゴミをのせられた。これ食えん、と言って返せば、仁王なら食えるっしょ、と真顔で言う。

「うちの学校?」
「いや、隣の公立」

カロリーメイトを頬張る幸村は不機嫌なのか面白がってるのか、はたまた戸惑ってるのか。どうともとれる面白い顔をしていた。俺は木の間からジリジリと焦がしてくる太陽を睨み付ける。さっきまでここは日陰だったのに。寝返りを一つして、陽射しから逃げる。

「なんでこうも違うんだ」
「ん?」
「同じ年の男が過ごす土曜日の昼下がりが、テニスかセックスかなんてあんまりだろ」

言ったって現状はなにも変わらないと俺も幸村も知ってるけれど。それでも『テニス』という枠を時々抜け出してみたくなる。

「俺これから女子大生と逆援」
「は?嘘つけ」
「うん、嘘」

俺は所詮コートから出たら、ちょっとばかし顔が良い中坊でしかない。女受けが良い顔と自覚してるあたり、性格悪いのかもしれないけど。テニスもしたいけど勉強もしなくちゃなんなくて、セックスもしたいけどテニスしなくちゃないない。

「青春たりーのぉ」
「なー」

結局俺たちは多くの柵に囲われて飼い慣らされてるんだろう。それでも生きていたいから、上手く尻尾を振らなければならない。練習に戻るのか、立ち上がった幸村にもう食い物なかと?と聞けばカロリーメイトの箱を渡される。確認するまでもなく中身はない。俺これ食えんー、と背中に叫べば、仁王なら食えるよ、と笑われた。食えんっつの。


20111004


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