報告は放送で
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「さぁて、お昼の放送の時間やで〜。飯食うとる連中も、タバコふかしとる先生も、鼻の穴も耳の穴もかっぽじってよぅ聞いてや〜」


彼女はハイテンションで原稿を読み上げた。我が四天宝寺中の放送部は活動が盛んで、3年になると月に二、三度、DJとしてお昼の放送をするのが通例となっていて、今日は彼女の担当日だ。彼女から昨夜メールが来ていたけれど、当然俺は知っていた。


「まずは曲のリクエストからっ。小春大好きさん、ってこれテニス部の一氏くんやんな?小春の好きな曲、桃色片想い流したってください、とのことでーす。小春ちゃん聞いとってな〜」


放課後の次に、大切にしてる時間。いつもは、騒がしい教室を抜け出して、誰もいない空き教室を陣取り、放送に耳を傾けるのだけど。

今日は珍しく謙也と俺の机で食べている。「アイツの放送の日に、ここにおるなんて珍しいんちゃう」と言ってきた謙也は意外と目敏い。そう誉めれば、謙也はいつものように苦い顔をした。誉められたのか、貶されたのか、悩んでるらしい。アホやなぁ、と呟くと謙也は食べてた焼きそばパンをぼろぼろと口から飛ばして反発してきた。うわっ、きたな。謙也は青い顔してるけど、別に怒ってないで。今日は特別、な。


「ということで、小春ちゃんに絶賛片想い中の一氏くんからのリクエストでした〜」


笑いが漏れるクラス。彼女は人気者だ、学校中の。容姿は目立つ訳じゃないけれど、喋らせると止まらないマシンガントークに、相手を引き込む話の仕方。話題にしても、流行の話題から漫才の話まで多くの引き出しを持っていて尽きることがない。この学校で彼女が好かれないわけがない。


「次はお悩み相談のコーナーやでー。ウチ実は放送でこのコーナーするん初めてなんですよ〜、まぁ精一杯回答させて貰いますね。ではでは記念すべき第一号は、3年のほわいとすと〜んさんから。"僕は彼女がいますが、彼女が付き合ってることを皆に言うのを嫌がります、どうしたらいいでしょう、彼女は放送部で…"って、え?いや、うん。え?は?」


彼女が動揺してるのがわかる、目の前で謙也が「お前は意地悪やな」と言った。なんとでも言え。クラスがざわついた。俺と彼女の関係を知っているクラスメートがニヤニヤしながら見てくるので、ニヤニヤ仕返したった。



「ほわいとすと〜ん、て。」



蔵かいな、



あ、あかんな。俺今の声でチーズリゾット5杯はいける。ヒュー、と歓声をあげたクラスに俺は手を上げて応じた。何もなかったように彼女は「え、エンディングは白玉さんからのリクエストで、ちょ、TOM24のNoresultでしゅ、す。ほ、ほんならまた〜」カミカミだったが、最後までやり遂げた彼女は流石だ。


今日から俺と彼女が学校公認のカップルとなったのは言うまでもない。


報告は放送で
学校で一番有名なカップル誕生



20110822 */秤
企画提出。楽しかったです。ありがとうございました!!

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