紳士妹01
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聞いてください皆々様。私は今、物凄く腹立たしいのです。それはもう、今までの怒りなど可愛いものだったと思えるほどに。



「近寄らないで貰えますか、先輩」



眼前の男は太陽にその銀髪を煌めかせながら意地の悪い笑みを見せました。




***紳士の妹***



「本当に頭にくるんですけど、どうしたら良いかな亜季ちゃん」


詐欺師先輩が私にしてくる数々の諸行に耐えきれなくなり、私は先日詐欺師先輩の元へ直談判しに向かいました。ですが、なにを言っても彼は底意地の悪そうな笑みを見せて、巧みに言葉をかわすのです。何時からか、と言いますと、彼が兄に連れられて家に来たときからでしょうか。


「そりゃ困ったねぇ、」


亜季ちゃんはサンドイッチを頬張りながら話を聞いてくれますが、どうにも投げやりでなりません。こんなに悩んでしまってる私がおかしいのでしょうか。


「おーす」


女子バスケ部の部長さんがいらっしゃいました。長身で顔が小さく手足の長い彼女は、快活で人当たりもよく、学内でも有名でファンもいるほどです。


「陸じゃん、どうしたの?」

「今度の練習試合のことで話あんねん。柳生さん、スマンけどちょっと亜季借りるわ」



そう言うとバスケ部の部長さんは亜季ちゃんを連れていってしまいました。亜季ちゃんは副部長さんなのです。有名人の登場に色めき立ったクラスですが、私にはバスケをする彼女たちがカッコいいと思うことはあれど、普段の生活ではお二人とも普通の中学生にしか見えないので、色めき立つ意味がわかりません。2人とも容姿が端麗なことは認めますが。つまり私が言いたいのは、私は他人に対し思春期真っ盛りの中学生に比べ、少々ドライだということです。



* * *



またしても問題発生です。私は園芸委員会に属しておりますゆえ、当番である日の放課後は校舎の裏などで花の剪定をしたり、雑草を抜いたりして過ごすのですが、今日はなんとも不愉快な場面に遭遇してしまいました。


「せ、先輩。ずっと先輩のこと…」


青春ですね。私も少々冷めてるとはいえ女の子。少女漫画のような展開に多少ならざるとも興奮、しませんでした。

なぜならば、相手の殿方が銀髪でいらしたからです。銀髪と言えばこの学校に1人しかいません。そう、化け物の軍団のようなテニス部に属し、我が兄とパートナーを組むという、



「ぷりっ」

「…仁王先輩」



気づけば告白していた女の子はいません。いつの間に私の横に来たのでしょうか。さすが詐欺師、侮れません。耳元で囁かれた意味のわからない擬音、吐息がくすぐったくて(この男のものと思うと鳥肌がたちましたが)私は思わず耳を触りました。


園芸委員の仕事、と思い、にじり歩いていきます。一緒の担当日だった、美しく儚げなあの先輩は今日は部活で遠方に行っているらしく来れないので、私が頑張らねばなりません。しかし、移動しようとすると、仁王先輩ももれなくついてきます。


「何なんですか、仁王先輩」

「ククッ、お前さん柳生の妹にしては気が強いんじゃの」


カチン、ときました。ですが、感情的になるのは相手の意のままになるようで嫌でしたので、私は呆れたようにしてため息をつきました。



「性格はよく似てると思いますけど。兄は先輩に素を見せてないのですね」



暗意に兄はお前に心開いてねぇんだよ、可哀想だなお前、と言っているのですがどこまで通じたでしょう。売られた喧嘩は高く買うんですよ、私。

先輩は喉奥で笑うような、ククッという笑い方をしました。


「言うのぉ、お前さん」


するといきなり、先輩は私の肩を掴んで体を反転させました。白く長い指で、顎を持ち上げられます。近くにある琥珀色の目が、ひどく楽しげでした。


「その目、気に入ったナリ」

最後に見た先輩の顔は、ひどく意地悪く、怪しげでした。なぜこのような人に気に入られてしまったかわかりませんが、私の平穏が壊されたことに間違いありません。誰か助けてください。



放課後の校舎裏

銀髪に気に入られてしまった





20110818

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