謙也弟02
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「ありえんやろ、」
『まぁまぁ、そう言ってやるなや。』
可愛い弟が心配になったんやろ、
そう電話口で呟く従兄弟。
***謙也くんの弟02***
「せやかて人引き連れてこんでええやん、一人で来たらええやん。俺リンリンもランランもびっくりするぐらいのパンダっぷりやったでほんまに。」
従兄弟は特徴的な低音ボイス(吐息が多くて嫌にエロい)で笑った。
『そら大変やなぁ』
「笑い事やないで侑士くん、入学一週間にして俺のライフはもうゼロや」
話しているのは東京にいる従兄弟の侑士くん。兄ちゃんと同い年だけど、兄ちゃんなんかより大人で落ち着いてて、この人の弟になりたかったと思うくらい。
「ほんまあの人何も考えてへん…」
『ん〜、せやなぁ、変なところで押しに弱いからなぁ、あのヘタレ』
とりあえず気張りいや、という低音を残して侑士くんは電話を切った。
「気張れるかい…」
アホだけど明るくて人懐っこい兄ちゃんと人見知りで大人しい俺は小さいころから比べられてきた。親も親戚もなんだかんだ兄ちゃんに期待してるし、学校でも好かれてるのは兄ちゃんだ。別に兄ちゃんのこと嫌いやないけど。
嫌いやないけど一緒にいるのが辛いときがある。
「やっぱ四天に行かんがよかったかもしれん…」
俺はそのまま眠りに落ちた。
* * *
『ヘイケンヤー、グッドイヴニーング』
「…へ、…イ。…ん…う、ん。って侑士やないかっ。今何時やと思ってんねんっ。」
『ん〜、ちょうど藁人形に五寸釘打ち込むのに良い時間やな』
「2時やぞ、2時!!なんでこんな時間に水戸黄門に起こされなあかんねん、藁人形で呪うたろうか!」
『謙也、お前着信水戸黄門にしとんのかいな…』
「ったり前や、水戸黄門ええ人やんけ」
『お前知らんのか、水戸光圀は生類憐れみの令に反発して犬を30匹くらい殺してんねんぞ』
「うわえっぐ、誰や水戸黄門ええ人とか言うたの」
『お前や、お前。しかもその犬の毛皮を綱吉公に送りつけてんねんぞ』
「うわえっぐいな、ちゅうか誰や綱吉公って」
『お前に言うた俺がアホやったわ』
本題に入るで、と言った。
『結局達也は四天に入学したんやな』
「おん、言ってへんやったっけ。アイツ俺と違って頭いいさかい、塾も行かんで受かってもうたわ」
『流石や達也やな。氷帝来ん?って誘ったんに』
「おま、そないなこと言うたんか。どうりで直前になって迷ってたんや」
『いや、それはちゃうと思うで』
「へ?なんでや?」
『それはな、』
侑士はこれは自分の憶測でしかないが、と前置きをして夕方の達也の悩みのことを話した。
『まあ、俺の想像やけどな。お前は案外ようできてるから弟は苦労すんねん』
「うわ、今侑士に褒められた」
『褒めてないわ、ようできてるなら弟のことぐらい気い使ったれや』
「おん。こないだは無理やり押し切られてしもうたけど、今度からちゃんとするわ」
『そうしたれ。どうしょうもなかったら氷帝に来させてもええで。達也の頭やったら軽く編入試験パスできるやろし』
「あ、あかんっ!それはさせへんで!」
『せやったらちゃんと守ったれや』
「おん」
おおきにな、言って謙也は電話を切った。
「あかんわ、アイツ。達也のこと全然わかってへんやないか」
俺大阪行ったろかな、そう呟いてつくづく自分は従兄弟に甘いと思った。
従兄弟は心配性
やっぱ土日で行くかな…
20110814
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