返却される答案と発表される順位。それに一喜一憂し、クラス全体が盛り上がる。暗殺を左右する五教科が返され、殺せんせーの触手を勝ち取ったのは莉桜、磯貝、愛美の三人だ。隣のカルマは答案を握り締めて教室を出て行った。結果は、何となく分かる。


「さて、お待たせしました。最後は因果さんです」


追試は別枠らしい。答案の入った封筒も私だけ個別のようだ。殺せんせーはヌルフフフと笑いながら一気に発表すると言ってきたので頷いて了承した。


「赤羽因果!英語100点!国語96点!社会97点!理科98点!数学100点!合計491点!…英語、社会、理科、数学、そして総合同点1位!」


読み上げが終わり、歓声が上がった。総合同点1位ということはまた浅野と横並び…。私は立ち上がり、教壇まで答案を取りに行く。


「得意の国語で1位を逃したのは惜しいですが、一人でトップを5つとは流石ですねぇ。いやはや、これで触手は8…」

「要らない」

「?」

「…私は、みんなと同じフィールドで闘えなかったから。後出しじゃんけんみたいだしー…。みんなには悪いけど、私に触手を貰う資格は無い」

「……」


静まり返る室内。それもそうだろう。だって折角のチャンスをみすみす溝に捨てるようなものだから。だけどこれだけは譲れない。追試の前日まで寝込んでいたけれど、みんなより勉強出来る時間が一秒でも多かったことは確かだし、これはフェアじゃない。そう訴えれば、みんなは渋々ながら「因果がそう言うなら仕方がない」と理解してくれた。


「では因果さんは自主棄権ということで……。しかし因果さんは大変良い行いをし、大きなハンデを背負いながらもこれだけの成績を残した。どちらも素晴らしいことだと思います。よく頑張りましたね」


殺せんせーはそう言って、触手で頭を撫でてくれた。ここの先生は揃いも揃って私を誉めてくれる。…まあ、悪い気はしないけど。ちょっと照れ臭くなりながら席に戻った。



***



「さて皆さん素晴らしい成績でした。5教科プラス総合点の6つ中、皆さんが取れたトップは3つです。早速暗殺の方を始めましょうか。トップの3人はどうぞ3本ご自由に」

「おい待てよタコ。5教科のトップは3人じゃねーぞ」


暗殺に待ったを掛けたのは寺坂。そしていつもの寺坂一派が前に出る。


「?3人ですよ、寺坂君。国・英・社・理・数、全て合わせて…」

「はァ?アホ抜かせ。5教科っつったら、国・英・社・理…あと家だろ」


4人が出したのは満点の家庭科の答案用紙で。あまりの不意打ちに殺せんせーは焦っている。


「ちょ待って!!家庭科のテストなんてついででしょ!!こんなのだけ何本気で100点取ってるんです君達は!!」

「だーれもどの5教科とは言ってねーよな」

「クックック。クラス全員でやりゃ良かった、この作戦」


家庭科は94点だったから、満点取ったのは純粋に凄いと思うけど。家庭科を認めようとしない殺せんせーを煽れと千葉がカルマに言う。


「………ついでとか家庭科さんに失礼じゃね殺せんせー。5教科の中じゃ最強と言われる家庭科さんにさ」

「そーだぜ先生約束守れよ!!」

「一番重要な家庭科さんで4人がトップ!!合計触手7本!!」


こうなってしまったら、殺せんせーも嫌だとは言えず。触手7本という現実に狼狽えている。そんな中、磯貝が手を上げた。


「それと殺せんせー。これは皆で相談したんですが、この暗殺に…今回の賭けの「戦利品」も使わせてもらいます」


[14/09/25]
title:水葬






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