「……っくしゅ、」

「ふあーあ」


私のくしゃみとカルマの欠伸が重なる。風邪でも引いたかな……テストまでには治さないと。


「こらカルマ君、因果さんを見習って真面目に勉強やりなさい!!君なら充分総合トップが狙えるでしょう!!」

「言われなくともちゃんと取れるよ。あんたの教え方が良いせいでね。けどさぁ、殺せんせー。あんた最近「トップを取れ」言ってばっかり。フツーの先生みたいに安っぽくてつまらないね」

「……」


カルマのやる気の無さが見て分かる。元々カルマは勉強出来る方だから私なんかより勉強時間が短いけれど、最近は特に短い。それで大丈夫なのかと私が不安に思ってしまう程。


「それよりどーすんの?そのA組が出した条件って…。なーんか裏でたくらんでる気がするよ」


問題はそこだ。一体A組…というより浅野は何を提示してくることか。


「心配ねーよカルマ。このE組がこれ以上失うモンありゃしない」

「勝ったら何でもひとつかぁ。学食の使用権とか欲しいな〜」

「ヌルフフフ、それについては先生に考えがあります」


そう言って殺せんせーが取り出したのは学校のパンフレットだ。


「さっきこの学校のパンフを見てましたが、とっても欲しいものを見つけました。“これ”をよこせと命令するのはどうでしょう?」


殺せんせーが指したものに皆が驚いた。まさか先生があれに目をつけるなんて。


「君達は一度どん底を経験しました。だからこそ次は、バチバチのトップ争いも経験して欲しいのです。先生の触手、そして“コレ”。ご褒美は充分に揃いました。暗殺者なら狙ってトップを殺(と)るのです!!」



***



明日がテスト本番だ。さっきまで最後の追い込みとして渚君や愛美達と一緒に勉強していた。あとはこのまま家に帰って軽く流してから今日は早めに休もう。


「うわぁあっ…!」

「誰かッ……!」


…悲鳴。子供の声だ。周囲を見渡せば、河川敷に水着姿の子供が三人。そして川に一人、その様子からして完全に溺れている。


「…ああ、もう!」


走って河川敷に下り、子供達の所へ。どうせこの暑さで安易に川へと入ったのだろう。ここは遊泳禁止だというのに。


「なにしてんの!」

「あ、あのっ、皆で泳いでたんだけど、あいつ溺れて……!深くて僕達じゃ……!」

「少年!誰か大人を呼んできて!」

「う、うんっ…!」


一人が走って民家の方へ。今日に限って携帯を家に忘れてくるなんて運がない。目の前には川で溺れている子供、明日は大事な期末テスト。……どっちが大切かなんて、考えなくたって分かる。

だから私は、鞄を地面に放り投げた。


[14/09/22]






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