「思いついた!原さんは助けずに放っとこう!!」


一瞬空気が凍り付いた。そりゃあそうだ。


「おいカルマ、ふざけてんのか?原が一番危ねーだろうが!!ふとましいから身動き取れねーし、ヘヴィだから枝も折れそうだ!!」


然り気無く寿美鈴に対して酷いことを言う寺坂。後で何言われても知らないんだから。


「…寺坂さぁ、昨日と同じシャツ着てんだろ。同じとこにシミあるし。ズボラだよなー。やっぱお前、悪だくみとか向いてないわ」

「あァ!?」

「でもな、頭はバカでも体力と実行力持ってるから、お前を軸に作戦立てるの面白いんだ。俺を信じて動いてよ。悪いようにはならないから」

「……バカは余計だ。いいから早く指示よこせ」


カルマがこっそりと寺坂に指示を出す。


「因果はいつでも撃てる準備しといて」

「了解(りょーかい)」


放置するのも嫌だったから一緒に持ってきていたライフルにオリジナルの銃弾を装填する。その間にも寺坂は下に降りて行き、シロとイトナに食って掛かる。


「イトナ!!テメェ俺とタイマン張れや!!」


シャツ一枚でイトナの触手に立ち向かう寺坂にシロは嘲笑を溢す。


「黙らせろイトナ。殺せんせーに気をつけながらね」

「カルマ君!!」

「いーんだよ。死にゃしない」


渚君は大丈夫なのかと焦った様子だが、カルマは笑っている。


「――…だから寺坂にも言っといたよ。気絶する程度の触手は喰らうけど、逆に言やスピードもパワーもその程度。死ぬ気で喰らいつけって」


気絶する程度の触手、だなんて簡単に言ったものだけど、寺坂は気合いでイトナの触手を受け止めた。


「よく耐えたねぇ。ではイトナ、もう1発あげなさい。背後のタコに気をつけながら…」

「くしゅんっ」


イトナのくしゃみがシロの言葉を遮った。くしゃみと鼻水が止まる気配は無く。寺坂のシャツには昨日教室で撒布したスプレーの成分が染み付いている為、イトナも殺せんせーと同様に影響を受けてしまったという訳だ。


「で、イトナに一瞬でも隙を作れば、原さんはタコが勝手に助けてくれる」


不安材料だった寿美鈴は殺せんせーが助け、皆はカルマの指示で動き出す。私もライフルを構える。


「殺せんせーと弱点一緒なんだよね。じゃあ同じ事やり返せばいいわけだ」


そして全員が一斉に川へと飛び込んだ。激しい水飛沫が舞い、イトナの触手は水を吸って膨らんだ。皆を危険な目に遭わせた罪は重い。狙いを定めて引き金を引き、触手を一本撃ち抜いてやった。


「で、どーすんの?俺等も賞金持ってかれんの嫌だし。そもそも皆、あんたの作戦で死にかけてるし。ついでに寺坂もボコられてるし。まだ続けるなら、こっちも全力で水遊びさせてもらうけど?」


この状況にシロは引いた。イトナはまたキレそうになっていたけれどシロに従い、二人は去って行った。皆は何とかやり過ごした状況に胸を撫で下ろしている。


「そーいや寺坂君。さっき私の事さんざん言ってたね。ヘヴィだとか、ふとましいとか」

「い、いや、あれは、状況を客観的に分析してだな」

「言い訳無用!!動けるデブの恐ろしさ見せてあげるわ」


ほら、やっぱり聞こえてた。寺坂は寿美鈴に弱い…のか?素直に謝ればいいのに。あ、ライフル仕舞っちゃおう。


「あーあ、ほんと無神経だよな寺坂は。そんなんだから人の手の平で転がされんだよ」

「うるせーカルマ!!テメーも1人高い所から見てんじゃねー!!」


少し目を離した瞬間、カルマは川に落ちていた。寺坂が引きずり落としたようだ。


「はぁァ!?何すんだよ上司に向かって」

「誰が上司だ!!触手を生身で受けさせるイカレた上司がどこにいる!!大体テメーはサボリ魔のくせにオイシイ場面は持って行きやがって!!」

「あーそれ私も思ってた」

「この機会に泥水もたっぷり飲ませようか」


皆がバシャバシャと川で戯れ合い始めた。楽しそう。カルマは迷惑がっているけど何処か活き活きしてるし、寺坂も良い表情だ。面白いから動画で撮っておこう。


「因果!呑気に撮ってないで助けろって!」

「えー、やだぁー」


だって濡れたくないもん。笑いながらそう言えば、パンケーキは無しだと言われてしまった。


[14/09/05]






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