生理ネタにつき苦手な方はご注意を

今日からプール開きだというのにきてしまった。お腹が痛いし、腰や頭も痛い。そしてダルい。朝一で薬を飲んだけど効き目はあまりなくて。カルマには休めばいいのにと言われたが、鷹岡の一件でまた烏間先生に心配を掛けてしまったから休む訳にはいかないのだ。でも……。


「……うー、」

「皆で沢に行くらしいから、その間保健室で寝てれば?」

「……んー…」


この暑さに授業どころでは無くなった為、皆は水着に着替えて近くの沢に行くらしいがこんな状態では行ける筈もなく。水着に着替える為に男女別の教室移動でばたばたしている間に輪を抜けて保健室へ。


「因果、あんたは着替えないの?」

「…察してぇ、」

「……ああ。こんな時ばかりは女って大変よね」


廊下で顔を合わせたイリーナはすぐに察してくれたようで、珍しく労るような素振りを見せる。


「薬は?」

「朝飲んだけど効かなくてさぁ」

「そんなに酷いなら帰ればいいじゃない」

「んーん、授業(じゅぎょー)には出ないと」

「どういう風の吹き回し?…仕方ないわね。少し強めの薬買って来てあげるから、保健室で寝てなさい」

「!…やさしーね、イリーナ。意外と」

「意外は余計よ!」


「大人しくしてるのよ!」とまるで捨て台詞のように言ったイリーナ。その優しさに甘え薬を買って来てもらうことにし、保健室へと足を運んだ。そして古びた扇風機の電源を入れてからベッドに横たわった。蝉の鳴き声は煩いし、ベタつく暑さも鬱陶しい。だけど横になってる方が幾らか痛みがマシになった気がする。少しは眠れそう。



***


《not因果》

因果は廊下からの足音で目を覚ました。枕元に置いたスマホで時間を確認するが、二十分程しか経っていなかった。足音は保健室の前で止まり、扉が開いた。


「因果、またサボりか?」

「…競泳は嫌(や)だけど水遊びだったら喜んで行ってるよぉ」


やって来たのは烏間だ。扇風機の音に気付いて入ってみたら彼女が居たという訳で。因果はサボりを否定しながらゆっくりと上半身を起こす。


「!…随分顔色が悪いな…大丈夫か?」

「んー、へーき」

「熱は?」

「測ってないけど…だいじょーぶだから」


普段よりも弱々しく応えた彼女に、烏間は眉間に皺を寄せた。そしてベッド傍へ足を進め、因果の前髪を上げて額に手を当てる。


「…!」

「少し高い気がするな。一度測った方がいい」


烏間は机から体温計を取り出して因果に渡す。風邪で体調を崩している訳ではないので熱を測っても意味が無いのだが、烏間が本気で心配しているのが目に見えて分かる為、因果は大人しく体温計を受け取った。少し経つと測定完了の音が鳴り、出してみると37.5℃と表示されている。


「微熱だが今日はもう帰った方がいいんじゃないか?家まで俺が送って、」

「カラスマ?何してるのよ、一体」


薬局の袋を片手に下げたイリーナが保健室へやって来た。


「彼女の体調が良くないようだから早退させようと」

「ああ、別に大丈夫よ。薬買ってきたから、飲んで少し横になってれば落ち着くわ。ね?因果」

「んー…だから、だいじょーぶだよ?センセ」

「しかし…」

「大丈夫だから!少しは察しなさいよ、ホントにデリカシーのないやつね!」


イリーナは烏間を殆(ほとん)ど強引に保健室から追い出した。ただ心配していただけだというのに、何処か不自然なイリーナの言動を不審に思いながら烏間は教員室に戻った。そして少し考えた所で因果の症状の原因に気が付き、彼女もただの子供では無いことを今更ながら感じるのだった。


[14/09/04]






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