《not因果》

鷹岡の拳を止めた烏間。その隙に殺せんせーが因果をイリーナの元へと運んだ。


「ゲホッ…ゲホッ……ありがと、殺せんせー」

「全く、また無茶をして!先生驚いて心臓が止まるかと思いましたよ!」


プンプンと顔を赤くして怒る殺せんせーは因果の手当てを素早く行う。鼻血を拭き取り、頬には湿布を。鼻血が止まらない為、因果は鼻をつまんで圧迫し止血する。


「あんた、意外と熱血漢なのね」

「…別にぃー?」

「そうですよ、イリーナ先生。因果さんは友達思いのとても優しい子なんです。無茶ばかりしますがね」


ぽんっと因果の頭を殺せんせーの触手が撫でる。

一方で鷹岡は烏間に対決を提示した。烏間の選んだ生徒一人と鷹岡がナイフで闘うというものだ。生徒が勝てば鷹岡が出ていくとあってやる気を見せる生徒もいたが、鷹岡が出したのは本物のナイフ。一瞬にして一同に戦慄が走る。


「さぁ烏間!!ひとり選べよ!!嫌なら無条件で俺に服従だ!!」


鷹岡の高笑いが響き渡る。足元に投げられたナイフを抜き取った烏間は真っ直ぐ渚の元へと足を運んだ。


「渚君、やる気はあるか?」


よりにもよって何故渚なのか、皆困惑した様子だ。


「地球を救う暗殺任務を依頼した側として…俺は君達とはプロ同士だと思っている。プロとして、君達に払うべき最低限の報酬は当たり前の中学生活を保障する事だと思っている。だからこのナイフは無理に受け取る必要は無い」


何故自分が選ばれたのか、烏間の意図は分からない。それでも烏間が渡すナイフなら信頼できると、渚は差し出されたナイフを受け取った。


「やります」


その様子にイリーナも何故渚を指名したのかと不満そうだ。


「私なら因果を出すわね。本物のナイフ位扱えるでしょ?」

「…まーね。でもさっきは結局掠るだけだったけどー」

「それは右手を捻挫してたからじゃないの?」


イリーナには右手首を捻挫していた為に精確さに欠け、狙いから外してしまったように見えたらしい。きっと生徒達にもそう見えただろう。だが実際は烏間の声で瞬時に向きを変えたことは因果本人と殺せんせーにしか分からない。


「烏間先生が出した答えは正しいですよ。あの条件なら私でも…渚君を指名するでしょう」


鷹岡と渚が向き合い、始まった闘い。辺りは静まり返り、二人へ視線が集まる。渚はナイフを見詰め、どうするべきか考えた。そして何をする訳でもなく、ただ綺麗に笑ったのだ。

笑って、普通に歩いて近付いた。鷹岡の腕に体が当たった所で歩くのを止め、迷うことなくナイフを鷹岡の喉元へと振りかざした。鷹岡は自分が殺されかけていることに気が付き、驚いて体勢を崩した。重心が後ろに偏っていた為、渚が服を引っ張ったら鷹岡が転んだ。そして正面からでは防がれるので背後に回り、ナイフを喉に軽く当てた。


「捕まえた」


あまりにも一瞬の出来事に一同に衝撃が走る。だがその中で殺せんせーだけが、こうなることを分かっていたかのような笑みを浮かべていた。


「ひょっとして烏間先生、ミネ打ちじゃダメなんでしたっけ」


[14/07/01]






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