《not因果》

梅雨が明け、今日から衣替えだ。渚は夏物の制服に、夏がそこまでやって来ていることをしみじみと感じていた。しかしクラスメイトの岡島は風情の欠片も無く、だらしない顔で薄着になった女子生徒を眺めている。


「いやぁ…これぞ眼福だ。…なあ?渚」

「あー…いや、うーん……」


同意を求められたものの渚は言葉を濁して曖昧な反応を見せる。だがそんなことも気にせずに岡島は自分の席から教室に入って来る女子を目で追っていく。そんな彼の姿に渚は声には出さずとも呆れるばかり。


「うおッ……!!」


ガタッ、と机が音を立てる。岡島が目を見開き見つめる先を渚も見ると、そこには登校してきた赤羽兄妹の姿が。更に言えば隣の彼が反応を見せたのは因果の方だ。


「「渚君、岡島、おはよー」」


兄妹は双子らしく声の揃った挨拶をしながら渚と岡島の横を通り過ぎて自分達の席に向かった。食い入るように因果を見詰めた後、岡島は興奮気味に渚に言った。


「……今の見たか?」

「因果さんのこと?…夏服でも校則違反だったね」

「そう言うことじゃない……!」

「は……?」

「確かに校則違反のオンパレードだが…男のロマンが詰まってるんだ!」


渚は全く意味が分からないと言わんばかりの表情を浮かべた。そして岡島にそこまで言わしめた因果の夏服はと言うと。

始めに目につくのは指定外の薄桃色の半袖ワイシャツだ。ベストとリボンは着用せず、無防備に第一、第二ボタンと開けている。スカートは規程の物だがその丈は見るからに短い。ニーハイから黒のハイソックスに変わっており、脚の露出が増えている。サイズの合っていないカーディガンが無い分身体のラインが分かりやすい。更に長い赤髪を後ろで高く一本に結い上げていることで、髪が揺れる度に白いうなじがちらちらと見える。

岡島曰くそれらが全て男のロマン、らしい。興奮気味の彼の熱弁に渚は元より、近くにいた杉野までドン引きしている。


「なんと言っても一番はあの無防備に、且つ、無自覚に見せつけている胸元だ……!流石E組の小悪魔…!やることがえげつねェ!」

「…岡島君……」

「しかし因果が矢田と張り合う程の巨乳だったとは…。あの魅惑の谷間をカメラに収めたいものだぜ」

「それ、カルマ君に聞かれたら大変なことになるよ…」

「ハッ…!身内が怖くて盗撮が出来るかってんだ」


そう言い切った岡島に、渚はもう何も言わなかった。


[14/04/30]
夏服設定
薄桃色の半袖ワイシャツ・短めのスカート・黒いハイソックス・スニーカー






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