「因果!起きて!」

「……んー、」


上からの声に枕から頭を上げると、目の前には仁王立ちするメグが居た。


「作戦会議するよ」

「……なにそれ、」


メグ越しに黒板を見れば球技大会がどうたらとか書いてあった。……ああ、もうそんな時期だっけ。ゆっくりと立ち上がり枕を小脇に抱えながら女子の集まっている一角に交ざる。


「私を起こしたってことはメンバーに入ってるわけぇー?」

「皆が因果は入ってた方が良いってなったんだけど、どう?」

「…まー、いーけどさぁ。バスケなんて素人(しろーと)だよー?」

「それなら皆そうだって。それに、因果が出た方が威圧感出るっしょ?」


心配する私を余所に莉桜がニカッと笑いながら言った。どうやら私はプレッシャー要員らしい。


「…まぁー、満場一致だったら良いよぉ」


そう言えば皆が頷き、口々に賛成だと言った。これによって私のレギュラー入りが決まった訳だ。E組はハンデとして無制限のメンバー交替が許されてるらしいけど、まあ当然ながら向こうにとってそんなものはハンデでもなんでもなくて。バスケなんか素人だしこれまでの球技大会も面倒で参加して来なかったから向こうがどんな感じかは知らないけど、取り合えず一泡吹かせたいな。



***



あっという間にやって来た球技大会当日。私はやる気十分なのに周囲からは「今日も相変わらず無気力だね」なんて言われながら、女子全員で本校舎へと下りてきた。


「……視線が痛い、」

「こんなんでビビっちゃ駄目だよカエデぇ」


E組の醜態を嘲笑いに集まった生徒達の視線に、隣のカエデと愛美は少し怯えた表情を浮かべている。だって、とカエデが言葉を続けていると、対戦相手がやって来た。ギャラリーから歓声が上がる。敵が私達を叩き潰す気満々なのが目に見えて分かるから、思わずこっちも火が付く訳で。

試合前のウォーミングアップを始めようかという時に、右ポケットに入れたままの携帯が震えた。確認してみると珍しいことに烏間先生からのメールで。「無茶と反則をせずに頑張れよ」、なんて。先生らしくぶっきら棒なたった一言だけど、それが妙に嬉しくて思わず頬が緩んだ。皆にもメールが送られているのかと顔を上げて周りを見回すとそんなことはなくて。


「……?」

「どうやらこのメールは因果さんだけのようですよ」

「律…、」


画面上に現れたのは知らぬ間にダウンロードされていたモバイル律だ。これまでは無かった個人宛のメールがまるで自分だけが特別だと思わせた。たとえそれが先生の気紛れだったとしても。


「因果、どうかした?」

「んー?なにがぁ?」

「どこか嬉しそうだったから、何かあったのかなって」


カエデが不思議そうにこちらを見詰めてくる。本当のことを言うと面倒なことになりそうだから、カエデには悪いけど適当に応えておこう。


「…これからの試合が楽しみなだけだってー」


携帯を脱いだ上着のポケットに入れ、メグに言われたから髪を後ろで一本に束ねる。さてと、取り合えず女バスのあのドヤ顔を崩してやりたい。


[14/04/10]






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