暴れ回る黒い触手が後ろの木を叩き折った。かなりの威力だ。完全にキレたイトナは拙い言葉を発しながらまるで血に餓えた獣のように殺せんせーへと襲い掛かった。…しかしイトナの攻撃が殺せんせーに届くことは無く。彼の首を何かが貫き、電源が切れたようにその場で倒れたからだ。


「すいませんね、殺せんせー。どうもこの子は…まだ登校できる精神状態じゃなかったようだ。転校初日で何ですが…しばらく休学させてもらいます」


シロは気を失ったイトナを軽々と持ち上げて担いだ。皆呆気に取られる中、殺せんせーがそれを制止する。


「いやだね、帰るよ。力ずくで止めてみるかい?」


殺せんせーがシロに触手を伸ばして触れた瞬間、ドロリとそれが溶けた。シロの白装束は対先生繊維で出来ているようで、これではシロを止めることが出来ない。


「心配せずともまたすぐに復学させるよ殺せんせー。3月まで時間は無いからね。責任もって私が…家庭教師を務めた上でね」


そう言い残しシロはイトナと共に去って行った。謎だけが残され、もやもやとした感情が燻る。そして外ではまた雨が振り出してきた。

皆で机を元に戻す中、殺せんせーは「恥ずかしい、恥ずかしい」と顔を触手で覆って俯いている。


「シリアスな展開に加担したのが恥ずかしいのです。先生どっちかと言うとギャグキャラなのに」

「「自覚あるんだ!!」」


ここで更に綺羅々が殺せんせーの台詞を反復して追い打ちを掛ける。そして殺せんせーはつかみ所のない天然キャラで売っていたと暴露した。


「…でも驚いたわ。あのイトナって子、まさか触手を出すなんてね」

「…ねぇ、殺せんせー。説明してよ」

「あの2人との関係を」


皆が口々に殺せんせーに説明を求める。視線が殺せんせーに集中し、もうはぐらかせないと悟ったのか諦めたように立ち上がり口を開いた。誰かが生唾を飲む音がやけに煩く聞こえた。


「実は先生…人工的に造り出された生物なんです!!」

「……」

「だよね、で?」


殺せんせーは腹を据えて言ったのだろうが、大方の予想がついていた為皆の反応は薄い。


「知りたいのはその先だよ殺せんせー。どうしてさっき怒ったの?イトナ君の触手を見て。殺せんせーはどういう理由で生まれてきて…何を思ってE組(ここ)に来たの?」


クラスを代表して渚君が質問した。沈黙が続く。窓を叩く雨の音が煩い。


「残念ですが今それを話した所で無意味です。先生が地球を爆破すれば、皆さんが何を知ろうが全て塵になりますからねぇ」

「「…!!」」

「逆にもし君達が地球を救えば…君達は後でいくらでも真実を知る機会を得る。もうわかるでしょう、知りたいなら行動はひとつ。殺してみなさい。暗殺者(アサシン)と暗殺対象(ターゲット)、それが先生と君達を結びつけた絆のはずです。先生の中の大事な答えを探すなら…君達は暗殺で聞くしかないのです」


殺せんせーは自分の言葉でシリアスな空気にしてしまった事が恥ずかしいのか、また顔を覆って教室を出て行った。

私達は殺し屋、銃とナイフで答えを探し。標的(ターゲット)は先生、自分の命で私達に問う。


[14/02/16]






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