イトナの触手が殺せんせーを後ろから貫いた。更に間髪を容れずに高速で触手の雨が殺せんせーに降る。凄まじい攻撃に殺ったようにも見えたが、寺坂の言葉で視線を上にやれば殺せんせーがそこに居た。床には脱け殻が。これが渚君から聞いていた脱皮のようだ。


「でもね、殺せんせー。その脱皮にも弱点があるのを知っているよ」


シロが言うには脱皮はエネルギーを消耗するからその直後はスピードが低下するらしい。腕の再生にも体力を使うようで、計算上現時点で二人はほぼ互角のようだ。そして触手の操作は精神状態に大きく左右されるとのこと。今の殺せんせーは分かりやすい程動揺している。


「今現在どちらが優勢か、生徒諸君にも一目瞭然だろうねー」


さっきと同じようにシロは殺せんせーに光線を浴びせて動きを止め、その隙にイトナが殺せんせーの脚を二本切断した。殺せんせーがここまで追い詰められているのを初めて見た。このまま殺せば地球は救われる。……けど、嬉しくないのはなんでだろう。悔しいのはなんでだろう。…その理由は分かってる、後からやって来た奴なんかじゃなくて、E組(私達)が殺したかった。


「…カルマぁ、」

「言わなくたって分かってる」


カルマの裾をきゅっと掴む。双子だから、これ以上言葉にしなくともお互い考えていることは大体分かる。でも今だけは皆が同じことを思ってる筈だ。


「あなた達に聞きたい事は多いですが…。まずは、試合に勝たねば喋りそうにないですね」

「…まだ勝つ気かい?負けダコの遠吠えだね」

「…シロさん。この暗殺方法を計画したのはあなたでしょうが…ひとつ計算に入れ忘れてる事があります」


殺せんせーが落ち着きを取り戻した。…入れ忘れてる事?……二人は兄弟、つまり元々は同じ。…ああ、そっか。


「殺れ、イトナ」


重たい一撃。床の破片が周囲に飛び散る。そして同時にイトナの触手が溶け落ちた。床には対先生ナイフが。どうやら渚君が持っていた物を殺せんせーが取って置いていたようだ。そして突然のことに動揺するイトナを先程の脱け殻に包んだ。


「同じ触手なら…対先生ナイフが効くのも同じ。触手を失うと動揺するのも同じです。でもね、先生の方がちょっとだけ老獪です」


殺せんせーはそのままイトナを外へと投げ捨てた。それによってイトナは場外となり、勝負がついた。殺せんせーの顔が緑の縞模様に変わる。


「先生の勝ちですねぇ。ルールに照らせば君は死刑。もう二度と先生を殺れませんねぇ」


殺せんせーはいつも通りにやにやしてるけど、イトナの様子が少し可笑しい気がする。


「生き残りたいのなら、このクラスで皆と一緒に学びなさい。性能計算ではそう簡単に計れないもの、それは経験の差です。君より少しだけ長く生き…少しだけ知識が多い。先生が先生になったのはね、経験(それ)を君達に伝えたいからです。この教室で先生の経験を盗まなければ…君は私に勝てませんよ」


皆が殺せんせーとイトナを見ている。そんな中私はふとシロに視線を移すと、慌て出したように見えた。


「勝てない…。俺が、弱い…?」


黒く色を変えた触手が暴れ始めた。…イトナの奴、完全にキレてる。


[14/02/16]






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