「兄弟同士、小細工は要らない。兄さん、おまえを殺して俺の強さを証明する。時は放課後、この教室で勝負だ」


転校生は殺せんせーに暗殺予告をして、自分でぶち抜いた壁から出て行った。その瞬間皆が殺せんせーを質問攻めにするけれど、殺せんせーも慌てて心当たりが無いと否定する。

壁が空いたまま、そして皆が兄弟疑惑に集中力を欠いたまま進む授業。お昼休みになると、転校生は大量のお菓子を持って戻って来た。自分の席で貪り食べており、皆はそれを見て殺せんせーと比較してる。だけど私は机の上に出来上がったお菓子の山の中に、気になっていた期間限定のお菓子を見付けてしまった。朝寄ったコンビニには売ってなかったんだよね。やばい、欲しい。


「因果、そんなに欲しいなら交渉してみたら?貰えるかもよ」

「カエデって読心術使えるんだっけぇ?」

「あんなに凝視してたんじゃ誰だって分かるよ」

「…じゃーいってこようかな」


お昼御飯を食べるカエデと優月に背中を押されてお菓子を貪る堀部の元へ。


「堀部ぇ、このお菓子頂戴(ちょーだい)?」


その瞬間クラス中がざわついた。まあ皆警戒して話し掛けようともしてなかったし。堀部は顔を上げてこちらをじっと見てきたかと思えば、立ち上がって欲しかったお菓子を手渡してくれた。


「ありがと、堀…」

「イトナでいい」


更に次々と机の上のお菓子を両腕一杯に渡された。持つのが大変で今にも何個か落ちそうだ。


「やる」

「あ、ありがとイトナぁ」


へらりと笑えば、またじっと見てきた。なんだろう、顔に何かついてるとか?そんなことが頭を過った時、唐突に頭を撫でられた。さっきのカルマのように。


「?」

「……」


気が済んだのかイトナは撫でるのを止めて席に座り、またお菓子を食べ始めた。今の行動にどんな意味があったのか分からず首を傾げながらカエデ達の元に戻った。


「ただいまー」

「凄い数貰って来たね」

「んー、渡されたからさぁ」


一人じゃ食べ切れない量だから近くにいた子に適当に配っていく。その間にも殺せんせーとイトナは同じグラビア雑誌を取り出して見始めた。それを見た岡島も同じ雑誌を出してる。私の横で今あげたプリンを食べながらカエデが疑問を溢した。それに対し優月がありがちなストーリーを語り、寿美鈴が設定の甘さを突っ込んだ。

どう言った意味で兄弟なのかは分からないけど、今日は殺せんせーの過去に近付ける気がする。



***



放課後。シロの指示により机を移動させて教室内にリングを作った。中にいるのは殺せんせーとイトナ。これを暗殺と言って良いのだろうか。


「ただの暗殺は飽きてるでしょ、殺せんせー。ここはひとつルールを決めないかい。リングの外に足が着いたらその場で死刑!!どうかな?」


普通ならそんな馬鹿げたルール守る訳ないけれど、生徒の前で決めたルールを破れば“先生としての”信用が落ちる。


「…いいでしょう、受けましょう。ただしイトナ君、観客に危害を与えた場合も負けですよ」


殺せんせーはルールを呑み、イトナもまた、提示されたそれを受け入れた。そしてシロが右手を静かに上げる。


「では合図で始めようか。暗殺……開始!!」


下ろされた右手と同時に殺せんせーの触手が一本切り落とされた。全員が息を呑んで言葉を失いイトナから目を離せなくなった。何故ならイトナも触手を操っていたから。そして見る見る内に殺せんせーがどす黒くなっていく。


「どこでそれを手に入れたッ!!その触手を!!」

「君に言う義理は無いね殺せんせー。だがこれで納得したろう。両親も違う、育ちも違う。だが…この子と君は兄弟だ」


大方二人は同じように造り出された生物なんだろう。だから兄弟。でもどうして殺せんせーが造り出されたのか、どうしてE組に来たのか。疑問ばかりが膨れ上がる。


「…どうやら、あなたにも話を聞かなきゃいけないようだ」

「聞けないよ。死ぬからね」


その瞬間シロが袖の中から光を発した。殺せんせーの動きが一瞬止まる。


「!?」

「この圧力光線を至近距離で照射すると君の細胞はダイラタント挙動を起こし一瞬全身が硬直する。全部知っているんだよ、君の弱点は全部ね」

「死ね、兄さん」


[14/02/15]






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