窓の外では鬱陶しい程雨が降り続いている。こんな日は髪型が上手く決まらないから嫌い。


「烏間先生から転校生が来ると聞いていますね?」

「あー、うん。まぁぶっちゃけ殺し屋だろうね」


前原の意見に同意。今日は転校生が来るらしい。新しい暗殺者(なかま)が増えるとあって、殺せんせーはどこか嬉しそうだ。寿美鈴が律に転校生についての話を振ると、彼女は話し出した。

元々は律とその転校生が連携して殺せんせーを暗殺する予定だったらしい。しかし二つの理由でそれはキャンセルされたとか。


「ひとつは彼の調整に予定より時間がかかったから。もうひとつは、私が彼より暗殺者として圧倒的に劣っていたから」


静まり返った教室で、誰かが生唾を飲み込む音がした。殺せんせーの指を飛ばした律の性能ですら転校生のサポートをするのに力不足だとされた。一体どんな怪物が来るのかと教室内に緊張が走る。そんな時、音を立てて前の扉が開いた。そして一拍間を置いて白装束に身を包んだ人物が静かに入って来たかと思えば、すっと右手を上げて白い鳩を取り出してみせた。突然のことに皆驚いている。勿論私も、だ。隣のカルマは何ともなさそうにしているが。


「ごめんごめん、驚かせたね。転校生は私じゃないよ。私は保護者。…まぁ白いし、シロとでも呼んでくれ」


よく分からない人だ。因みに殺せんせーは一連のことに驚いたらしく液状化して天井の角に張り付いていた。特に問題無いと判断したのか降りて元に戻る殺せんせー。廊下では烏間先生がシロって人を警戒していた。先生もどんな転校生が来るのか知らないのかな。


「では紹介します。おーいイトナ!!入っておいで!!」


全員の視線が扉に向かう。しかし、音を立てたのは扉ではなく私のすぐ斜め後ろの壁で。破片が辺りに飛び散り、私にも少しかかった。壁をぶち抜いて席に座った一人の男の子よりも意識はそちらに向かう。


「因果、大丈夫?」

「…なんとかねぇ」

「あ、まだ付いてる」

「ん、」


カルマが飛んできた破片を取ってくれた。殺せんせーは派手な登場をした転校生に対してリアクションに困ったようで、これまた中途半端な顔をしている。


「堀部イトナだ。名前で呼んであげて下さい」


少し可笑しな保護者と転校生。なにか問題が起きない方が難しいかもしれない。


「ねぇ、イトナ君。ちょっと気になったんだけど。今外から手ぶらで入って来たよね。外どしゃ降りの雨なのに…なんでイトナ君一滴たりとも濡れてないの?」

「……」


確かに、カルマの言う通りだ。彼は全く濡れていない。すると彼はきょろきょろと教室内を見回した。一瞬目が合ったけど、立ち上がりカルマに近付いた。


「……おまえは、たぶんこのクラスで一番強い。けど安心しろ。俺より弱いから…俺はおまえを殺さない」


カルマに顔を近付け、まるで子供をあやすように頭を撫でた。転校生の考えがよく読めない。


「…!!」

「俺が殺したいと思うのは、俺より強いかもしれない奴だけ」


転校生は抑揚の無い言葉を淡々と続けながら殺せんせーに近寄った。


「この教室では、殺せんせー、あんただけだ」

「強い弱いとはケンカの事ですかイトナ君?力比べでは先生と同じ次元には立てませんよ」


殺せんせーはシロから貰った羊羹を包みごと食べている。


「立てるさ」


すると転校生も同じ羊羹を取り出した。


「だって俺達、血を分けた兄弟なんだから」

「「!?」」

「き」

「き」

「き」

「き」

「「兄弟ィ!?」」


見事にハモった言葉。静かだった教室が一気にざわつく。殺せんせーと兄弟ってことは、同じように人工的に造られた生物…ってとこかな。


「負けた方が死亡な、兄さん」


[13/12/27]






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