久し振りに親と口論になった。話題はありがちな進路と将来のこと。

警察沙汰になったことはないからだろうが、私とカルマの不良行為にも口を出さない呑気な両親。普段から私達を置いて海外旅行を楽しむ放任主義で、親らしいことをしてくれない人達だからこそ、此処ぞとばかりに親面するのに腹が立った。

埒が明かない押し問答に思わず手を出してしまいそうになり、着の身着の儘家を飛び出した。このまま帰るのも何だし、カエデとか愛美辺りなら泊めてくれそうだから手当たり次第家に行ってみよう。


「おい、赤羽!」

「……あ?」


振り向けば明白な不良が六人。男が四人、女が二人。見たことあるような無いような。


「オレらのこと忘れたとは言わせねぇぞ!」

「…悪いけど、アンタ達みたいなアホ面一々覚えてないんだよねぇ」

「何だとッ!」

「ぶっ殺してやる……!」

「…殺すなんて簡単に言わない方がいいよ」


真正面から向かってくる馬鹿共。ストレス発散がてら叩き潰してやる。

……六人が地面に倒れ込む頃には雨が降って来た。はした金位は持っているだろうと思ったら、盗んだ若しくは取り上げたと思われる財布が出て来た。免許証や保険証も入ってる。これは持ち主が可哀想だから後で交番に届けて持ち主に返してもらおう。

梅雨明け最後の足掻きと言わんばかりに降り続く雨。傘も差さずに歩く。何だか冷たい雨が心地よかった。油断してナイフで切られてしまった腕の傷口が熱を帯びる。一気に襲い来た疲労感と戦いながらふらふらと歩いて適当なベンチに腰掛けた。


「ねぇ、キミ」

「……?」


顔を上げれば、黒い傘を差しスーツを着たサラリーマン風の男。五十代位の親父だ。


「キミ、いくら?」


……ああ、ここら辺って援交してる女子高生が買ってくれる相手を探すことが多いんだっけ。私もそんな股の緩い馬鹿と同類に見られてるなんて心外だ。


「キミ可愛い顔してるね。四万でどう?」

「……」

「あれ、気に入らない?じゃあ六万は?」


上から下まで舐め回すように見てくる変態の視線が気持ち悪い。だけどこの親父は良いスーツを着てるし、時計もブランド物。取り合えず大人しく付いて行って、物陰で気絶させて警察に突き出せばいいか。


「帰る場所が無いんでしょ?だったらおじさんの家に……、」


そう言いながら私の肩に手を置いた。虫酸が走る。にやつく顔面に一発パンチを叩き込んでやろうと思った瞬間、私の肩に置かれた親父の手を第三者が掴んだ。


「ウチの生徒から手を離してもらおうか」

「な、何だいきなり!」

「…烏間、センセー…?」


割り込んで来た第三者は烏間先生で。何でここに居るの?と思っている間に、烏間先生は親父の手を捻り上げて追い払ってしまった。


「…どーして、ここに……?」

「車で通り掛かった時、赤髪の子が傘も差さずに居るのが見えたんだ。もしかしたらと思って来てみればこれだ」

「……」

「とにかく、一先ず車に戻るぞ」


先生に手を引かれ、近くに停めた車の助手席に放り込まれた。そのまま車は走り出し、確実に私の家に向かっているのが分かった。


「……で、一体何があったんだ」

「…親と、喧嘩したの」


ぽつりぽつりと今日あったことを順番に話していく。全部話し終えるまで烏間先生は一言も口を出さずに聞いてくれた。


「…そうか、話は分かった」


すると車はUターンして元来た道を戻り始めた。


「センセー…?」

「今は家に帰りたくないんだろ?」

「…うん、」

「仕方が無いから一度俺の家に行く。濡れたままじゃ風邪を引きかねないからな」


[13/07/09]






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