梅雨の6月。殺せんせーの暗殺期限まで残り9ヶ月だ。外は当たり前に雨が降り続いており、濁った色の空のように心もどこか淀んだ気になってしまう。それでも修学旅行の時の約束通り今度烏間先生の家に遊びに行くことになったし、今度陽菜乃や凛香達とスイパラに行くことが決まった。今はそれだけが楽しみだ。


「因果、帰ろうぜ」

「んー、帰りおっちゃんのトコ寄っても良(い)ー?」

「別に良いけど」

「この前のエアガン新しく改造したから試し撃ちしたいんだぁー」

「ああ、そういうコト」


おっちゃんは、お店の奥にある個人の射撃場で特別に試し撃ちをさせてくれる。家とか外で撃つのはちょっと気が引けるし、いつもお店で撃たせてもらっているのだ。

そして嫌になる程雨が降り続く中、カルマとお店を訪れた。平日のこの時間帯だけに店内はがらんとしている。


「おっちゃーん、試し撃ちさせてぇー」

「いらっしゃい、お二人さん。試し撃ちならほら、奥で好きなだけすると良い」

「ありがとぉー」


射撃場への鍵がカウンターから投げられ宙に舞う。それを難なくキャッチして、カルマと共に奥の射撃場に足を踏み入れた。いつものように電気を点けて用意を始める。


「へえ、奥ってこうなってんだ」

「おっちゃん個人の射撃場らしーんだけど、私にだったら貸しても良(い)ーって言ってくれたんだぁー」


おっちゃんは本当に優しくて大好きだ。なんだか親戚のオジサンみたいだし、今までの大人達のように私を頭ごなしに否定したりせずに話を聞いてくれる。

鞄から取り出したシューティンググラスを掛けて改造したエアガンに手を伸ばした時、ポケットの中のスマホが振動した。画面には「着信」と「渚君」の文字。


「もしもーし」

『あっ、因果さん?突然なんだけど、今から××駅まで来て貰えないかな…?』

「んー…今からはちょっと厳しぃーかも。どーかしたぁ?」

『実は……、』


渚君の話を簡潔に纏めると「前原を嘲笑った本校舎の奴らに目に物見せたい」らしい。その為に実行役の一人として私に白羽の矢が立ったようだ。因みにカルマを呼ばないのは計画以上のことをしそうだから、だそう。

面白そうな話だけど流石に今すぐには行けそうにないし、計画が烏間先生に知られたら雷が落ちそうだから泣く泣く断った。


『そっか…突然ごめんね』

「んーん、こっちこそごめん。代わりと言っちゃーなんだけど、凛香と千葉に声掛けてみたらどーかな」

『千葉君と速水さんに?』

「そー。多分私より戦力になると思うよぉー」

『そっか!ありがとう因果さん!』

「どーいたしましてー」


そこで通話を切った。夜にでも渚君にメールして計画がどうなったのか聞いてみよう。


「渚君、なんだって?」

「んーとねぇ、」


簡単に内容を説明すると、カルマは少し残念そうな表情を浮かべた。渚君の予想通り、カルマを呼んでたら収拾がつかなくなる所だった。

そして私は定位置に立ち、エアガンを構えて標的に向かって引き金を引いた。


[13/03/31]






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