修学旅行2日目、今は班別行動の時間だ。私達の班は4班だから、殺せんせーが付き添うのは一番最後。それまで京都の町を観光する。やっぱり京町家を風情があって良いな。隣のカルマは興味無さそうだけど。


「いい景色じゃん。暗殺なんて縁の無い場所でさぁ」

「そうでもないよ、杉野。ちょっと寄りたいコースあったんだ。すぐそこのコンビニだよ」


渚君の言葉で向かった先は「坂本龍馬・中岡慎太郎遭難之地」と彫られた石碑の立つ近江屋の跡地だった。すぐ近くには本能寺もあり、この近辺で行われた暗殺は数知れず。


「ずっと日本の中心だったこの街は…暗殺の聖地でもあるんだ」


暗殺の対象(ターゲット)になってきたのは、その世界に重大な影響を与えるであろう人物ばかり。それから言えば、地球を爆(や)る殺せんせーは典型的な暗殺対象(ターゲット)だ。


「次、八坂神社ねー」

「えー、もーいいから休もうぜ。京都の甘ったるいコーヒー飲みたいよ」

「じゃー甘味処行こーよ。時間余裕(よゆー)あるしさぁ」


それからコース途中にあった甘味処に立ち寄り一旦休憩。…昨日の奴らがいつ来るか分からないし、今のうちにカルマのポケットにGPSの受信機を忍ばせておこうか。隣で宣言通り甘ったるいコーヒーを飲むカルマのポケットに受信機を入れた。

甘味処を出た後はカエデが希望していた八坂神社向かい、その後有希子の希望だった祇園に来た。


「へー、祇園って奥に入るとこんなに人気無いんだ」

「うん、一見さんお断りの店ばかりだから目的もなくフラッと来る人もいないし、見通しが良い必要もない。だから私の希望コースにしてみたの、暗殺にピッタリなんじゃないかって」

「さすが神崎さん下調べカンペキ!」

「じゃ、ここで決行に決めよっか」


その時、近くで車の扉を閉める音が聞こえた。


「ホントうってつけだ。なんでこんな拉致りやすい場所歩くかねぇ」

「!!…え?」

「…!?」


昨日見た不良が四人。ポケットに手を突っ込んでスタンガンを用意する。一番細い奴の方が効き目あるかな。


「…愛美は隠れてた方良いかも、」

「は、はい……!」


怯える愛美を影に隠れさせる。不良達はカルマの方を見てるから気付かれてない筈。


「……何、お兄さん等?観光が目的っぽくないんだけど」

「男に用はねー。女置いておうち帰んな」


次の瞬間カルマはスキンヘッドの男に顎から一撃。更に顔面を掴んで電柱に叩き付けた。私もカルマが動いたと同時に一番細身の男に蹴りを入れてから首筋にスタンガンを押し当てて気絶させた。…そう言えばあの傷の男がいない。


「ホラね、渚君。目撃者いないとこならケンカしても問題ないっしょ」

「そーだねぇ」

「…っカルマ!」


傷の男は鉄パイプで背後からカルマの後頭部を殴り、カルマは地面に伏した。隠れて機会を窺ってたなんて、迂闊だった。


「ホント隠れやすいなココ。おい、女さらえ」

「ちょ何…ムググ」


カエデと有希子が後ろから押さえ込まれ、助けに行こうとしたら背後から両手を掴まれてしまった。…この展開はヤバい。杉野と渚君を軽々とやった男達は私達を車に押し込み、私が気絶させた男を回収して車を出した。

身体にガムテープを巻かれてしまい身動きが取れない。こんなことになるなら昨日の内に殺っておけば良かった。ただの不良だと思って甘く見すぎてた。こいつら犯罪慣れしてる。


「うひゃひゃひゃ!!チョロすぎんぞこいつら!!」

「言ったべ?普段計算ばっかしてるガキはよ、こういう力技にはまるっきり無力なのよ」

「…ッ犯罪ですよねコレ。男子達あんな目に遇わせといて」

「人聞き悪ィな〜。修学旅行なんてお互い退屈だろ?楽しくしてやろうって心遣いじゃん」

「な、まずはカラオケ行こーぜカラオケ」

「なんで京都まで来てカラオケなのよ!!旅行の時間台無しじゃん!!」

「わかってねーな。その台無し感が良いんじゃんか。そっちの黒髪の彼女ならわかるだろ」


リーダー格の傷の男が見せてきたのは茶髪で派手な格好をした有希子の写メ。驚きはしないけどちょっと意外。


「――…毛並みの良い奴等ほどよ、どこかで台無しになりたがってんだ。恥ずかしがる事ァねーよ、楽しいぜ台無しは。堕ち方なら俺等全部知ってる。これから夜まで台無しの先生が何から何まで教えてやるよ」


[12/11/01]
title:水葬






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