待ちに待った修学旅行。分かっていたことだけど、移動の新幹線はE組だけ普通車だ。宿泊先も別だろうけど、その方が暗殺には有利だ。グリーン車に乗り込んだ奴等が自慢気に話す中、どこぞのハリウッドセレブのような格好をしたイリーナがブランド物の鞄を持ってやって来た。木村も同じことを思ったらしくイリーナに問い掛けると、聞いてもないのに暗殺の極意を説く。すると人数確認を行っていた烏間先生がやって来た。


「目立ちすぎだ着替えろ。どう見ても引率の先生のカッコじゃない」

「堅い事言ってんじゃないわよカラスマ!!ガキ共に大人の旅の…」

「脱げ、着替えろ」


うわ、烏間先生キレてる。烏間先生の形相に思わずイリーナも怯えた表情を見せた。すると先生はイリーナの鞄を有無を言わさず奪い取り、何故か私に渡して来た。


「因果、悪いが鞄から一番まともな服を探して着替えさせてくれ」

「はぁーいっ。イリーナ、行くよぉー」

「は!?ちょ…待っ……!」


イリーナの手を引いてトイレに連れ込む。一応許可を取ってから鞄の中を物色。やっぱり似たような派手な物しかない。仕方がないからフードの付いた寝巻きをイリーナに渡す。


「じゃー、これ着てね?」

「寝巻きじゃない!絶対に嫌よ!」

「だって一番まともなのこれなんだもん。着替えないとまた烏間センセーに怒られるよー?」

「っ……」


泣く泣く着替えることにしたイリーナ。私はトイレから出て着替え終わるのを待つ。それから少しして寝巻きに着替えたイリーナが出て来たが、余程嫌だったようで涙目だ。


「烏間センセー、着替えさせて来たよぉー」

「助かった、ありがとう。……寝巻きか?あれ」

「んーっ、あれしか無くてさぁー」

「…そうか」


烏間先生は「この際仕方がない」、そんな表情をしている。そうしている間にも新幹線は出発したが、殺せんせーの姿が見えない。きょろきょろと辺りを見回すと、渚君が驚いたように声を上げた。その視線の先には窓に張り付いた殺せんせーが。渚君が電話をかけて事情を聞くと、駅中スウィーツを買って乗り遅れたらしい。殺せんせーらしい話だ。



***



次の駅でちゃんと乗ることが出来た殺せんせーは、バレバレの変装をして大量の荷物を持って来た。かなり目立つと思う。しかも既に鼻が取れてるし。


「殺せんせー、ほれ。まずそのすぐに落ちる付け鼻から変えようぜ」

「…おお!!すごいフィット感!!」


菅谷が殺せんせーに投げ渡したのは手作りの付け鼻。殺せんせーにピッタリで、違和感が無くなった訳じゃないけどマシになったと思う。


「あはっ、面白いね渚。旅行になると皆のちょっと意外な面が見れるね」

「うん。これからの旅の出来事次第で…もっと皆の色んな顔が見れるかも」


[12/10/22]
title:水葬






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