今日は修学旅行の話で1日が終わった。カルマと帰ろうとした時、渚君に声を掛けられた。


「カルマ君、因果さん。一緒に帰らない?」

「俺は良いよ、因果は?」

「んーっ、でも帰りに寄って行きたいお店があるんだよねぇ。良(い)ー?」


そう言うと、渚君は「特に予定も無いから付き合うよ」と言ってくれた。

やっぱり修学旅行の話題になりつつ電車に乗り込んで、いつも降りる一つ前の駅で降りる。駅前に出て通い馴れた路地裏を進んでいく。薄暗いそこに渚君は少し怯えているようにも見える。そして辿り着いたのは、ボロボロの「open」と書かれた札が掛かったお店とは思えぬお店。扉を開けて中に入ると、いつものことながら目に飛び込んで来るのは膨大な数のエアガンだ。あ、新作入ってる。


「おっちゃーん、来たよぉー」

「お、来たな因果嬢。今日はカルマ君に、お友達も一緒かい」


奥からスポーツ新聞を片手に出て来たのは、白髪混じりで中年太りのおっちゃん。私のことを「嬢」と呼んだりしてちょっと変わってるけど昔は結構凄い人だったらしい。


「因果さん、ここって……?」

「ここはサバゲー用品の専門店だよー」


知る人ぞ知る有名なお店。元傭兵だったおっちゃんが経営しているから、癖のある銃の捌(さば)き方を分かりやすく教えてくれたりする。親父狩りにあってるおっちゃんをたまたま助けたのが出逢いの切っ掛け。元傭兵なのに日本の不良が怖いらしい。


「話が終わるまでカルマと渚君はお店の中見て待っててー」

「ん、渚君行こう」

「う、うん」


カルマと渚君は結構広い店内に繰り出して行った。おっちゃんは段ボール箱をカウンターの上に置き、中から色々と取り出していく。


「来週修学旅行なんだろう?何かあった時に使える物を取り寄せたから持ってってくれ!」

「おおっ、ありがとぉーおっちゃん」


あの時助けてくれたお礼にと、おっちゃんは色々な物をくれる。持っているエアガンも、半分以上がおっちゃんから貰った物だ。


「まずはこれ、小型スタンガン。小さいが威力は凄まじい、大の男でも一時的に気絶させることが出来る」

「へぇー」


おっちゃんは一つずつ説明しながら紙袋の中に入れていく。普通に買ったら結構な金額になるような物ばっかり。今日は防犯を兼ねた物が多い気がする。


「ああ、後これもだな。小型GPS発信器と受信機だ」

「何に使うのー?」

「班で観光すると大体の確率で逸れる奴が出て来る。そんな時時間を無駄にせず迅速に合流する為に使うんだ」

「あー、なるほど」

「ま、今日はこんなとこだな。修学旅行、楽しんで来なよ因果嬢」

「ありがと、おっちゃん。お礼(れー)にお土産買ってくるからねぇ」

「楽しみにしてるよ」


人の良さそうな笑顔で渡してくれた紙袋をカウンター越しに受け取ると、奥の方からカルマと渚君が戻って来た。


「話終わった?」

「んーっ、待たせてごめんねー渚君」

「あれ?俺は?」

「カルマは良(い)ーのっ」

「初めて見る物ばっかりで楽しかったよ、因果さん」


渚君にはちょっと気を使わせちゃったかな。


「…なら良かったぁ。それじゃおっちゃん、次はお土産持って来るからねー」

「気を付けて行ってらっしゃい」


そう言葉を交わしてお店を後にした。渚君にはここまで付き合ってくれたお礼に何か奢った方が良いよね、何が良いかな?


[12/10/22]






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