《not因果》

テストの次は修学旅行。幾らE組と言えども学校行事の予定は目白押しな訳で。修学旅行も任務であり、既にプロの狙撃手(スナイパー)達が手配されているらしい。だがやはり修学旅行は一大イベントであり、皆浮かれ気分で京都を回る班を作る。


「カルマ君!同じ班なんない?」

「ん、オッケ〜」


渚がカルマに声をかけるとカルマは二つ返事で返したが、杉野はカルマの暴力沙汰を心配している。するとカルマは1枚の写真を取り出した。


「旅先のケンカはちゃんと目撃者の口も封じるし、表沙汰にはならないよ」

「おい…やっぱやめようぜ、あいつ誘うの」

「うーん…でもまあ、気心知れてるし」


過去の喧嘩の口封じとして撮った写真に、杉野と渚はドン引きしている。そんなこともありながら集まったメンバーは、渚、杉野、カルマ、茅野、奥田だ。クラスの人数的に班は6人乃至(ないし)7人班になり、最低でももう1人に入ってもらわなければならない。


「俺をナメんなよ、この時のためにだいぶ前から誘っていたのだ。クラスのマドンナ神崎さんでどうでしょう?」

「おお〜異議無し!」


杉野が以前より声をかけていた神崎が班に入った。神崎は目立たないが真面目でおしとやか、尚且つ美人で、クラスメイトに人気がある。そんな彼女に微笑まれ、渚は思わず頬を赤らめた。それを隠すように口を開く。


「取り合えず6人揃ったけど、どうする?もう1人誘う?」

「あっ!じゃあ私誘いたい子が居るんだけど」

「誘いたい子?」


茅野の言葉に杉野が返すと、彼女は笑顔で答えた。


「クラスの小悪魔系女子、因果はどうかな?」


茅野が指名したのは、こんな時でも机に突っ伏して暢気に寝ている因果だ。小悪魔系と言うのには語弊があるかもしれないが、誰もそれを否定出来ないでいる。因果を誘うこと自体は誰も反対しないが、気掛かりなのはカルマだ。


「カルマ君は大丈夫?兄妹揃って同じ班でも」

「特に気にしないよ」

「じゃあ私、因果を起こして来るね!」

「因果ちゃん、他の班からも呼ばれてますよ…?」


奥田がそう言って指差した先には、眠る因果を起こす他の班の女子。それに茅野は奮起して彼女達の輪の中に入り、何やら話している。


「茅野達、何話してるんだろ……」


渚が呟いた矢先、彼女達は因果を囲んでジャンケンをし始めた。その光景に男子は若干引いている。


「あいつらジャンケン始めたぜ……」

「うん、そうだね…」


そしてあいこが続いていたジャンケンも漸く決着が付き、因果を誘う権利を手に入れたのは茅野だ。笑顔でピースサインをこちらに向ける茅野に、渚達は何とも言えない表情で笑っている。そして茅野は因果の肩を揺らして起こし、彼女を班に引き入れた。因果はカルマの上着の裾を掴みながら欠伸をし、眠たそうに目を擦る。


「渚君にカエデに杉野、愛美に有希子にカルマ、ね。みんな宜しくねぇ」

「カルマと一緒になってケンカとかすんなよ?」

「んーっ、大丈夫だって。目撃者の口封じもするから、表沙汰にはならないよー?」


先程のカルマと全く同じことを言う辺り、二人が双子だということを実感する。彼女の言葉に杉野は諦め気味だ。それから全員で机を移動させ班を作り、机の上に地図や旅行雑誌を広げて観光ルートを決めていく。


「フン、皆ガキねぇ。世界中を飛び回った私には…旅行なんて今さらだわ」

「じゃ、留守番しててよビッチ先生」

「花壇に水やっといて〜」


前原と矢田に全く相手にされないイリーナはそれがむず痒く、落ち着きがない。そして照れ隠しのように愛銃のデリンジャーを取り出した。


「何よ!!私抜きで楽しそうな話してんじゃないわよ!!」

「あーもー!!行きたいのか行きたくないのかどっちなんだよ!!」


イリーナを切っ掛けに騒がしくなった教室に戻って来た殺せんせーは、触手で分厚い辞書のような物を持っている。


「ひとり1冊です」

「重っ…」

「何これ殺せんせー?」

「修学旅行のしおりです」

「辞書だろこれ!!」


殺せんせーが徹夜で作ったしおりには、イラスト解説の全観光スポットから旅の護身術まで様々なことが書いてあるようで、初回特典は組み立て紙工作金閣寺らしい。


「どんだけテンション上がってんだ!!」

「そろいもそろってうちの先生は!!」


イリーナに殺せんせーと、先生であるが生徒と同じように浮かれている姿に皆は呆れている。


「大体さぁ、殺せんせーなら京都まで1分で行けるっしょ」

「もちろんです。ですが移動と旅行は違います。皆で楽しみ、皆でハプニングに遭う。先生はね、君達と一緒に旅できるのがうれしいのです」


E組は暗殺教室。普通よりも盛り沢山になるであろう修学旅行に、皆のテンションは上がっていた。


[12/10/19]
title:水葬






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