昨晩カルマに決めてもらったフリルがあしらわれた淡いピンクのワンピースを靡かせながら待ち合わせ場所に急ぐ。今日は約束通り烏間先生にスイパラに連れて行ってもらうのだ。前に送ってくれた所まで迎えに来てくれるらしく、やっぱり先生は優しいなーと思いながら脚を進める。

角を曲がって目に飛び込んできたのはあの時の車、そして運転席には烏間先生が乗っている。見たところスマホを弄っているようで私には気付いていない。駆け寄って助手席の窓を軽くノックすると、烏間先生の視線がこちらに向けられる。そのまま扉を開けて、中を覗き込むように屈む。


「おはよーございますセンセー」

「おはよう、因果」


そのまま助手席に乗り込むと、前と同じように先生の匂いが鼻を掠めた。先生は私服で、スーツ姿とはまた違った印象だ。私服姿も格好良い。前以て場所は伝えておいたから、烏間先生はお店から一番近い駐車場へと車を走らせる。


「センセー、あのね……」

「その呼び方、止めないか」

「え?」

「いや、端から見れば変に誤解を招くような気がしてな」


まあ確かに私と烏間先生が並んで歩けば一体どんな関係なのか分かりにくいし、そこで更に「先生」と呼べば誤解を招く可能性は充分にある。


「それじゃあ何て呼べばいーい?」

「そうだな…人前では適当に名前で呼んでくれ」

「んーと、…惟臣さん?」

「ああ、それで良い」


私だけが先生と二人で出掛けて、私だけが先生を名前で呼べる。自分が他の子よりも特別だと思えて少し嬉しかった。

車内ではやはり暗殺の話になり、話題が尽きることなく駐車場に着いた。カエデから聞いた情報によると結構人気になっているらしく、開店前に並ばないと入れないようだ。だから開店時間より少し前に来てみたが、既に二組程先客が居た。その後ろに並び、然程待たずに入店出来た。

甘い香りが鼻腔を擽(くすぐ)る。それだけで私は胸を躍らせるが、烏間先生の表情を見る限りあまりそうではないらしい。なのにわざわざ私に付き合ってくれて本当に嬉しい。


「せん…っ惟臣さん、どれも美味しそーだよ。早く取りに行こー?」

「…そうだな、」


皿に様々な種類のケーキを乗せ、飲み物は少し悩んでから紅茶…ダージリンにした。それらを持って席に戻ると、軽食とコーヒーを取った先生がいた。スイパラなのにスイーツの欠片も無い。やっぱり無理に連れて来ちゃったかな。


「因果の為に来たんだ、俺のことは気にしないで好きなだけ食べろ」

「っ…う、うん!」


考えが表情に出ていたのか、先生にそう言い当てられてしまった。でもそう言ってくれたのだから、遠慮無く頂くとしよう。

ぱくぱくと手を止めることなくケーキを頬張る。カルマにはリスみたいだなんて言われたこともある。口の中が甘い物で一杯になって幸せだ。これなら2ホールはいける気がする。

ふと向かいに座る烏間先生と目が合うと、先生は目を細めて微かに微笑んでいた。思わず胸がドキリと高鳴る。


「旨いか?」

「うん!連れて来てくれてありがとぉ、惟臣さん」


今、凄く幸せだ。勉強頑張ってきて良かったな。


[13/03/19]






「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -