遂に始まった中間テスト。全校生徒が本校舎で受ける決まりの為、私達E組だけがアウェーだ。そんな中、1時間目の試験官は大野。奴はわざとらしく咳払いをしたり、指で机を叩いて集中力を乱しに来る。が、そんなものは関係無い。ガリガリとシャープペンを走らせていった、その時。問11でふと手が止まった。分からない訳じゃない。ただこの問題はまだ習っていない範囲の問題で、今回のテスト範囲には入っていなかった筈。……理事長だ、奴が範囲を変えたに違いない。


「……チッ、」


小さく小さく、舌打ちをした。こんな卑怯な手に負けてたまるか。



***



採点の終わった回答用紙が返って来たが、教室の空気は酷く重い。案の定テスト2日前に範囲の大幅な変更があり、それによって全員が50位以内に入る事は無かった。烏間先生が本校舎へ抗議の電話をするが簡単にあしらわれてしまう。


「…先生の責任です。この学校の仕組みを甘く見すぎていたようです。…君達に顔向けできません」

「「……」」


そう言って顔を見せようとしない殺せんせーの背後にこっそり忍び寄り、カルマと一緒に殺せんせーの後頭部にナイフを投げる。


「にゅやッ!?」


殺せんせーは間一髪でナイフを避ける。


「それでもいいのー?」

「顔向けできなかったら、俺達が殺しに来んのも見えないよ」

「カルマ君に因果さん!!今先生は落ちこんで…」


持っていた回答用紙を殺せんせーに投げると、二人分の回答用紙を器用に触手で受け止めた。


「「俺達(私達)、問題変わっても関係無いし」」


カルマの合計点数は494点で学年4位。そして私は殺せんせーから教わったことを実践して誤字や見落し無く初めて500点満点を取り、宣言通り学年1位を取った。


「うお…すげぇ」

「俺の成績に合わせてさ、あんたが余計な範囲まで教えたからだよ」

「私はこの範囲予習済みだったからねー」

「だけど、俺はE組(このくみ)出る気は無いよ。前のクラス戻るより暗殺の方が全然楽しいし。因果は?」

「私も右に同じー。こんなに楽しいことは他に無いよー」

「…で、どーすんのそっちは?全員50位に入んなかったって言い訳つけて、ここからシッポ巻いて逃げちゃうの?それって結局さぁ、殺されんのが怖いだけなんじゃないの?」


焦っているようにも見える殺せんせーをカルマが小馬鹿にしたように煽る。すると皆がそれに乗って殺せんせーを煽り出した。


「なーんだ、殺せんせー怖かったのかぁ」

「それなら正直に言えば良かったのに」

「ねー。「怖いから逃げたい」って」

「にゅやーッ!!逃げるわけありません!!期末テストであいつらに倍返しでリベンジです!!」


顔を真っ赤にして反論する殺せんせーがなんだか可笑しくて、つい笑ってしまった。すると皆も吹き出し、声を上げて笑う。


「何がおかしい!!悔しくないんですか君達は!!」


更に笑い声が大きくなり、先程の重い空気は消え去った。呆れている烏間先生に近寄り、回答用紙を見せる。


「学年1位取ったよ、烏間センセー。約束通りスイパラ、行ってくれる?」

「約束、だからな。…因果」

「んーっ?」

「1位、おめでとう。頑張ったな」

「っ…ありがと、センセー」


ふっ、と微笑んで褒めてくれた烏間先生。それが嬉しくて、私も笑顔で返した。


[12/10/08]
title:水葬






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