「さらに頑張って増えてみました。さぁ、授業開始です」


殺せんせーは昨日の分身を遥かに越える数で生徒一人に対し四人掛かりで授業を行い始めた。数が多いだけ、残像もかなり荒くなっている。そして2時間打っ続けの授業に流石の殺せんせーもオーバーヒートしてしまったようで。そんな殺せんせーを自分達の席でカルマと一緒に眺めていた。


「ははっ、殺せんせーもよくやるよね」

「んー…そーだねぇ」

「因果はテスト対策出来てんの?」

「まぁーまぁー、かな。カルマは?」

「俺?いつも通り適当にやり過ごすよ」

「……羨ましい、」


机に顔を伏せながら呟いた言葉は、黒板の前でなにやら話していた殺せんせーの言葉に掻き消された。そして何故か殺せんせーが教室を出て行ってしまい、前に居た桃花に話を聞いてみた。


「桃花ぁー、殺せんせー、どーかしたの?」

「うん…なんか急に機嫌悪くなっちゃって」

「…ふーん」


更に全員校庭に出ろとのことで、仕方無く校庭に出る。校庭では殺せんせーがサッカーのゴール等を端の方に片付けており、それをカルマと一緒に木に寄り掛かって眺める。


「なにすんだろーねぇ」

「…さあ」


ゴールを移動させた殺せんせーはくるりと振り返りイリーナを指(?)指した。


「イリーナ先生、プロの殺し屋として伺いますが」

「……何よ、いきなり」

「あなたはいつも仕事をする時…用意するプランは1つですか?」

「…?」


突然の質問に、イリーナは不思議そうにしながらも答えた。


「…いいえ。本命のプランなんて思った通り行く事の方が少ないわ。不測の事態に備えて…予備のプランをより綿密に作っておくのが暗殺の基本よ」


殺せんせーは更に続くイリーナの言葉を遮って烏間先生にも質問を投げ掛けた。


「ナイフ術を生徒に教える時…重要なのは第一撃だけですか?」

「……第一撃はもちろん最重要だが、次の動きも大切だ。強敵相手では第一撃は高確率でかわされる。その後の第二撃、第三撃を…いかに高精度で繰り出すかが勝敗を分ける」

「結局何が言いたいん…」

「先生方のおっしゃるように、自信を持てる次の手があるから自信に満ちた暗殺者になれる。対して君達はどうでしょう。「俺等には暗殺があるからそれでいいや」…と考えて勉強の目標を低くしている。それは…劣等感の原因から目を背けているだけです」


校庭の真ん中でくるくるとスピードを上げながら回る殺せんせーは話すことを止めない。殺せんせーの巻き起こす風で髪が乱れ、片手で押さえる。


「もし先生がこの教室から逃げ去ったら?もし他の殺し屋が先に先生を殺したら?暗殺という拠り所を失った君達にはE組の劣等感しか残らない。そんな危うい君達に…先生からの警告(アドバイス)です。――…第二の刃を持たざる者は…暗殺者を名乗る資格なし!!」


巨大な竜巻となった殺せんせー。巻き上げた雑草や小石が凄まじい音を立てて上から落ちてきた。


「……校庭に雑草や凸凹(でこぼこ)が多かったのでね、少し手入れしておきました」


風が止み、土埃の収まった校庭はとても綺麗になっていた。


「先生は地球を消せる超生物。この一帯を平らにするなどたやすい事です。もしも君達が自信を持てる第二の刃を示せなければ、相手に価する暗殺者はこの教室にはいないと見なし、校舎ごと平らにして先生は去ります」

「第二の刃…いつまでに?」

「決まっています、明日です。明日の中間テスト、クラス全員50位以内を取りなさい」

「「!!?」」


明日に迫った中間テストで全員50位以内。なんとも難易度の高い条件だ。


「君達の第二の刃は先生が既に育てています。本校舎の教師達に劣るほど…先生はトロい教え方をしていません。自信を持ってその刃を振るって来なさい。仕事(ミッション)を成功させ、恥じる事なく笑顔で胸を張るのです。自分達が暗殺者(アサシン)であり…E組である事に!!」


[12/10/05]






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