《烏間と園川の会話》

騒動の黒幕は鷹岡だった。防衛省の方で鷹岡を確保した後、金に目が眩んだ彼の部下達も全員取り抑えた。連絡を受けた園川からそれを聞いた烏間は一先ず安堵したが、彼女は眉を顰めて言葉を続けた。


「…それから、貸し切ったホテル近辺の茂みから鷹岡の部下が二人見付かったそうです」

「茂み?」

「供述によると鷹岡の指示で赤羽因果さんを攫いに来たらしいのですが、実行に移す前に観光客を名乗る中年の男性にやられた、と……」

「……」


ようやく一息吐いた所で浮上した疑問。その中年の男が今回の暗殺を聞き付けた殺し屋だったとしても、生徒を助ける筋合いはないだろう。だが自衛隊上がりの男二人に一般人が勝てるとも思えない。


「……その男が一体何者なのか、調べてみる必要があるな」


烏間の脳裏には以前ロヴロに言われた言葉が過った。



***



《通りすがりの観光客と男の会話》

リゾートホテルの物陰で男を二人気絶させ、その場から離れてすぐ、ポケットに入れていた携帯が震えた。


「もしもし」

『やあ、お疲れサマ。オレの情報通りだっただろ?』

「ああ、確かだった。恩に着る」

『しっかしアンタも物好きだよな。“教え子”が心配で沖縄まで行くなんて』

「お前がそうさせる情報を流してきたからだろ」

『けど結果的に教え子は助かった訳だ』

「……」

『もうすぐホテルに乗り込んだ生徒達が鷹岡と接触する。もう部下が狙ってくることはないだろうし、安心して大丈夫だぜ』


電話口の向こうで飄々と語る男はそこまで言って通話は途切れた。携帯をポケットに突っ込み、大きく息を吐く。


「……掴み所の無いヤツだ」


そして男は更に闇へと消えていった。


[15/03/28]






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