みんな憂鬱そうな顔をして外に出る。今日は月に一度の全校集会。E組が晒し者になる日。教室を出る前に隣でスマホを弄るカルマに声を掛ける。


「カルマはどーすんの?」

「フケるよ?罰喰らっても痛くもかゆくもないし」

「そっか、私は前に痛め付けたヤツの顔を見に行って来るねー」

「程々に。ついでにイチゴ煮オレ買って来てよ」

「んーっ、分かったぁ」


財布を持って行くのも面倒だから適当に小銭をポケットに入れて外に出た時、渚君を見掛けたので声を掛け、そのまま一緒に本校舎の体育館へと向かった。


「因果さん、それなに?」

「えー?ああ、コーヒー牛乳だよ?喉乾いちゃってさぁー」

「えっ!集会中に飲むの…?」

「んーっ、別に怒られたって痛くもかゆくもないし」

「す、すごいね。カルマくんもだけど、成績良くて素行不良って羨ましいよ」

「そー?」


憂鬱そうな渚君とたわいない話をしながら体育館に入ると、E組を嘲笑う声は大きさを増す。


「渚く〜ん。おつかれ〜」

「わざわざ山の上から本校舎(こっち)に来るの大変でしょ〜」


品の無い笑い方をする男共。何も言えないでいる渚君の横から顔を出して軽く睨み付ければ、そいつらは見る見る内に青ざめていく。


「あ、赤羽……!」


停学明けすぐに駅であった事を思い出したようで、態度を一変させ逃げるようにして人混みの中に消えて行った。


「…普通にこんなこと出来るのって因果さんとカルマくん位だよね」

「んー…ま、自分ではそんなに考えたこと無いけどねー」


とは言うものの、悪い意味で私達双子の名前が知れ渡っているのは“こういう時”に便利だ。カルマの所為で私まで有名になってしまったけど、それはそれで感謝している。


「因果、カルマがフケたから因果が一番前なんだけど……」

「あー、私一番後ろに並ぶから。磯貝が前でいーよ」


並び順の確認に来た磯貝にそう返すと、磯貝は「分かった」と応えて前の方へと行った。私なんて別にいいのにわざわざ確認に来るなんて流石学級委員長。そう考えながら辺りを見回すと、前に私がバットで殴り付けた大野と目があった。クスリと笑うと、向こうは瞬時に視線を逸らして肩を震わせている。私自身がトラウマと化しているのだろうが、恐ろしいことに罪悪感は湧いて来ない。だって悪いのは向こう、カルマを裏切った報いだ。

そうしてる間に始まった全校集会。校長ですらE組を嘲笑う。あの理事長のことだ、中継映像を観てほくそ笑んでいるに違いない。こんなごみ溜めのような学園にルールもマナーも存在しない、少なくとも私はそう思っているから持って来ていた紙パックのコーヒー牛乳を平然と飲む。途中「何様のつもりだ」と陰で言っている声が聞こえたから、その方向を睨み付けたら静かになった。そんな事すら面と向かって言えない奴らに怯む訳がない。

表向きE組の担任の烏間先生が挨拶の為に体育館にやって来た。すると可愛くデコったナイフケースを取り出して烏間先生に見せる陽菜乃と莉桜。当然「ここでは出すな」と怒られた訳で。その光景に他のクラスの女子からは烏間先生を羨ましがる声が聞こえて来た。更にビッチ…じゃない、イリーナまでやって来て生徒や教師の視線を集める。一番後ろだからよく分からないけど、どうやらイリーナが渚を胸に押し付けたようだ。

ステージ上の生徒会長が今配ったプリントを見ろと言うが、E組にプリントが用意されている訳も無く。全部記憶して帰れと言う発言にE組以外が大笑いをしている。その瞬間、E組全員の真横にプリントが現れた。どうやら変装した殺せんせーが手書きで用意してくれたようだ。殺せんせーをナイフで刺そうとするイリーナを烏間先生が掴まえて外に連れ出し、E組みんなでそれを笑った。


[12/09/22]
title:水葬






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