ビッチ先生のことで長いように感じた1日が終わった。段々潰れ始めた枕をロッカーに仕舞いながらカルマに話しかける。


「カルマぁー、何か食べて帰ろー」

「いいけどケーキ以外ね」

「えー」

「あ、渚君。俺達と帰りに何か食ってかない?」

「え?あ、うん。いいよ」


丁度通り掛かった渚君をカルマが呼び止めて誘う。ケーキが駄目ならドーナツがいいな。今キャンペーン中で安いし新商品も出てるから。


「因果さん、ちょっといいですか?」

「どーしたの?殺せんせー」


振り向けば殺せんせーが手招きしてきた。カルマと渚君に「待ってて」と伝えて殺せんせーに付いて行く。着いた先は教員室。私何か悪いことしたっけ。


「せんせー、私何かしたー?」

「そうではありません。実は“向こう”の先生方が因果さんに戻って来てもらいたいと話して……、」

「嫌」

「……」

「絶対に嫌」


あんな所にはもう二度と戻りたくない。成績しか見ていない教師達の家畜に成り下がるなんて嫌だ。E組(ここ)の方がずっと楽しくて居心地が良い。


「…そうですか、ですが無理強いはしません。これからも暗殺頑張って下さいね」

「……うん、ありがと殺せんせー」


小さく頷くと、殺せんせーが頭を撫でてくれた。思わず目を細める。その時、教員室にビッチ先生が入って来た。


「あ、ビッチ先生ぇー」

「双子の片割れ!その名前で呼ぶんじゃないわよ!」


ビシッと人差し指で指されながら言われた。と言うか双子の片割れって。カツカツとヒールを鳴らして近付いてくるビッチ先生。


「全く、あんた達の所為で「ビッチ」ってしか呼ばれなくなったじゃないの!」

「えー、良いじゃん。みんな親しみを込めて呼んでるんだからさぁー」

「良くない!大体あんた達は……!」


がみがみ言ってくるビッチ先生の横をするりと抜けて扉を開ける。


「話は終わったし、私帰るねぇー」

「話はまだ終わってないわよ!」

「気を付けて帰って下さいね」

「はーいっ。じゃね、殺せんせー、イリーナせんせ?」

「ッ!あんた…名前……!」


名前で呼んだら驚いた顔をしていて、その反応が面白かった。クスリと笑みを溢しながら教員室を後にして、カルマと渚君の元へと駆け出した。


[12/09/19]
title:水葬






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