黒板の前で座りながらタブレット端末を苛立ちながら操作するビッチねえさん。殺せんせーの手入れが余程頭に来たらしい。


「あはぁ、必死だねビッチねえさん。あんな事されちゃプライドズタズタだろうね〜」

「でもさぁーそれが人間として当然の反応じゃない?」

「…まぁね。で、この時間は寝ないの?」

「んー、さっき寝たから眠くない」


カルマに応えながら、手元の教科書をぱらぱらと捲って眺める。貰ってすぐに何度も読んで、飽きる程読み返した教科書は面白みが無い。ふと耳に入って来たのは磯貝とビッチねえさんの会話。


「――…地球の危機と受験を比べられるなんて…ガキは平和でいいわね〜。それに聞けばあんた達E組って…この学校の落ちこぼれだそうじゃない。勉強なんて今さらしても意味ないでしょ」


あ、皆反応した。そりゃあ馬鹿にされれば頭に来るよね。今のでクラス全員敵に回しちゃったよ。勿論私も。そんな事も分からずに一人で饒舌に話すビッチねえさんに誰かが消しゴムを投げ付けた。一瞬の静寂から一転、皆の怒号が響き渡る。


「出てけくそビッチ!!」

「殺せんせーと代わってよ!!」

「なっ…なによあんた達その態度っ殺すわよ!?」

「上等だよ殺ってみろコラァ!!」


そんな中カエデだけ「巨乳なんていらない!!」とズレた事を言っていて思わず苦笑した。学級崩壊寸前の教室から逃げるように出て行ったビッチねえさん。それにより必然的に自習になる。仕方が無いから全員でグラウンドに出て烏間先生考案の「暗殺バドミントン」をする事になった。私は得点係。この前私一人が殺せんせー風船を割り続けた結果「試合にならない」と烏間先生に言われてしまい、当分の間得点係を言い付けられたからだ。

5時間目終了を告げるチャイムが鳴り、コートと得点板を片付けてから全員で教室に戻った。私はコーヒー牛乳、カルマはイチゴ煮オレを飲みながら渚君達とたわいない話をしていると、カエデが私とカルマを見比べて口を開いた。


「やっぱり似てるね」

「「そう?」」


口を開けばハモる。まあいつものことだけど。渚君達はクスクスと笑っている。そんな時、ヒールを鳴らしながらビッチねえさんが教室に入って来た。コーヒー牛乳を飲みながら自分の席に戻る。するとビッチねえさんはチョークを手に取り黒板に筆記体で英文を書いた。


「You're incredible in bed!言って(リピート)!!」


突然の事にこの場にいた全員が呆気に取られてしまった。


「ホラ!!」

「「…ユ、ユーアーインクレディブル イン ベッド」」


訳が分からないまま全員で復唱する。


「アメリカでとあるVIPを暗殺したとき、まずそいつのボディーガードに色仕掛けで接近したわ。その時彼が私に言った言葉よ。意味は「ベッドでの君はスゴイよ…」」


中学生に読ませる文章じゃ無いだろ。ビッチねえさんはどういう訳か外国語について語り始め、実践的な英会話術を教えるとまで言った。


「もし…それでもあんた達が私を先生と思えなかったら、その時は暗殺を諦めて出ていくわ。……そ、それなら文句無いでしょ?…あと悪かったわよ、いろいろ」


言葉尻が小さくなり不安げな表情を浮かべる。ビッチねえさんのあまりの改心振りに皆言葉が出ないようで、周りと顔を合わせた後、一気に笑い出した。


「なんか普通に先生になっちゃったな」

「もうビッチねえさんなんて呼べないね」

「……!!あんた達…わかってくれたのね」


感動からか泣き出すビッチねえさん。改心したビッチねえさんの呼び方を変えようという話になったが、


「じゃ、ビッチ先生で」


結局そこに落ち着く訳で。本人は最初の言葉を撤回してファーストネームで呼んで良いと言うが、「イリーナ先生」より「ビッチ先生」の方が良いと皆で口々に話している。


「そんなわけでよろしくビッチ先生!!」

「授業始めようぜビッチ先生!!」

「キーッ!!やっぱりキライよあんた達!!」


癇癪を起こして皆と言い合いを始めるビッチねえさん改めビッチ先生。


「また楽しくなりそーだねぇ、カルマぁー」

「そーだね、因果」


[12/09/12]






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