殺せんせーがいない4時間目は英語の授業。黒板の前で座るのは授業をせずに暗殺の計画を確認するビッチねえさん。見たところ対先生弾を使わずに鉛弾で殺る作戦らしいけど、殺せんせーがそんなモノで死ぬ筈が無い。 「なービッチねえさん、授業してくれよー」 「そーだよビッチねえさん」 「一応ここじゃ先生なんだろビッチねえさん」 「あー!ビッチビッチうるさいわね!!」 皆に「ビッチねえさん」呼びが浸透してて少し笑えた。ビッチねえさんは授業をする気なんて更々無いようだし、私も受ける気が無いから枕に顔を埋める。 「カルマぁー、後で起こして」 「あー?うん、分かった」 *** 昼休みになってカルマに起こされた。今日は陽菜乃と凛香と一緒に昼食を取っていると、学級委員長のメグが5時間目の授業変更を伝えた。ビッチねえさんが殺るらしく、授業は烏間先生の体育となった。 「やった!烏間先生の体育だー」 「烏間先生ホントにカッコいいよねー」 「因果もそう思わない?」 「へっ?あ、うん。カッコいーと思うよ」 「だよねー!」 ぼんやりしてた時に陽菜乃に聞かれたから少し反応が鈍った。…体育、ジャージ持ってきてないから制服で良いかな。 5時間目、皆がジャージ姿でグラウンドに集まる中、私だけ制服で浮く。カルマはちゃっかりジャージ着てるし。 「…因果、体操着はどうした」 「忘れたぁー」 「…はぁ、なら今日は銃の扱い方だけにしておけ」 「別に動けるから気にしないで組手の相手してよ、烏間センセー」 手首に隠し持ってたナイフをするりと取り出して構えると、烏間先生は呆れながらも相手をしてくれると言った。取り敢えず真っ正面から行ってフェイントを掛け、背後を取る。首元目掛けてナイフを刺すが、余裕であしらわれてしまった。体勢を立て直してもう一度ナイフで挑む。烏間先生は余裕の表情でいるけど、片手でナイフを振り翳(かざ)してあしらわれるその時に、もう片方の手首に仕込んでいたナイフを瞬時に取り出して烏間先生の喉元に突き付けた。 「…ナイフは一本だけ、なんて誰も言ってないよね。センセー」 「…ああ。俺の負けだ」 周りから大袈裟に歓声が上がる。その時ふと陽菜乃が言っていたことを思い出し、烏間先生に言ってみる。 「烏間センセー?センセーに当てたからよしよししてー」 「は?」 「あっー!因果ばっかりずるい!」 「だって当てたもーん」 羨ましがる陽菜乃と凛香を横目に目の前の烏間先生を見上げると、また呆れたような表情を浮かべて溜め息を吐いた後、頭を撫でてくれた。ぐしゃぐしゃと髪を掻き回すようだけど、その手はかなり優しい。こう言うのもたまには良いな。 「…これで良いのか?」 「うん、やる気出た」 にっこりと笑って烏間先生を見上げた時、三村が殺せんせーとビッチねえさんが倉庫に向かっていくのを見た。 「…なーんかガッカリだな、殺せんせー。あんな見え見えの女に引っかかって」 「……」 「…烏間先生。私達…あの女(ひと)の事好きになれません」 「…すまない。プロの彼女に一任しろとの国の指示でな。…だが、わずか1日で全ての準備を整える手際。殺し屋として一流なのは確かだろう」 一体何が起こるのかと、全員が一旦手を止めて倉庫を見詰める。すると突然鼓膜を劈(つんざ)くような銃声が周囲に響き渡った。銃声が止み、少ししたその時。 「いやああああ!!」 「「!!」」 「な、何!?」 「銃声の次は鋭い悲鳴とヌルヌル音が!!」 ビッチねえさんの悲鳴に驚く中、倉庫では未だに悲鳴とヌルヌル音が聞こえてきた。一体何が行われたのか気になり全員で倉庫に向かうと、中から殺せんせーが出てきた。 「殺せんせー!!おっぱいは?」 「いやぁ…もう少し楽しみたかったですが。皆さんとの授業の方が楽しみですから。六時間目の小テストは手強いですよぉ」 「…あはは、まあ頑張るよ」 代表して渚君がそう言った時、倉庫からふらりとビッチねえさんが現れた。しかも今時珍しいブルマ姿にされて。面白いから写メ撮っとこ。 「まさか…わずか1分であんな事されるなんて…。肩と腰のこりをほぐされて、オイルと小顔とリンパのマッサージされて…早着替えさせられて…。…その上まさか……触手とヌルヌルであんな事を…」 そう言って倒れたビッチねえさん。と言うか殺せんせーってリンパマッサージも出来るんだ。放課後やってもらおうかな。 「殺せんせー、何したの?」 「さぁねぇ、大人には大人の手入れがありますから」 「「悪い大人の顔だ!!」」 「さ、教室に戻りますよ」 ビッチねえさんを放置して、殺せんせーに付いて教室に戻る。 「殺せんせー、後で私にもマッサージしてー」 「小テストで百点取ったら良いですよぉ。その代わり今回のテストはいつも以上に激ムズですけどね」 「えー、せんせーひどーい」 そう言うと殺せんせーは「ヌフフフ」と楽しそうに笑っていた。 [12/09/09] title:水葬 |