今日で5月に入った。殺せんせーが地球爆破を宣言した3月まで後11ヶ月。でも殺せんせーを殺せそうにないのが現状。そんなことをぼんやりと考えながら枕を抱えるようにして突っ伏していると、殺せんせーと烏間先生、そして殺せんせーに引っ付いている金髪の女が教室に入って来た。


「…今日から来た外国語の臨時講師を紹介する」

「イリーナ・イェラビッチと申します。皆さんよろしく!」


烏間先生はこの人事を学校の意向と話していたけど、こんな時にE組に来る人間は一般人ではない筈だ。それを殺せんせーも分かっているだろうけど、女講師の胸元を見ていつも以上にニヤついていた。中年のおっさんみたいにデレデレしてる。


「ああ…見れば見るほど素敵ですわぁ。その正露丸みたいにつぶらな瞳、曖昧な関節。私とりこになってしまいそう

「いやぁお恥ずかしい」


なんだ、殺せんせーって意外と単純なんだ。HRと授業が終わり、休み時間は全員グラウンドに出て殺せんせー相手にサッカーと暗殺をしている。


「ヘイパス!!」

「ヘイ暗殺!!」


端からしたら可笑しな掛け声がグラウンドに響き渡る。今思ったけど蹴ってるサッカーボールに対先生用のBB弾を仕込んでおけば良い様な気がする。取り合えず銃を持って殺せんせーの背後を取った時、女講師が校舎から出て来て殺せんせーに駆け寄った。


「お願いがあるの、一度本場のベトナムコーヒーを飲んでみたくて。私が英語を教えてる間に買って来て下さらない?」

「お安いご用です、ベトナムに良い店を知ってますから」


デレデレの顔で承諾した殺せんせーはそのままベトナムまでコーヒーを買いに行ってしまった。丁度その時校舎からチャイムが聞こえ、代表して磯貝が女講師に話し掛けた。


「…で、えーと、イリーナ…先生?授業始まるし教室戻ります?」

「授業?…ああ、各自適当に自習でもしてなさい」


煙草を銜えジッポライターで火を付けて紫煙を吐き出す。


「それと、ファーストネームで気安く呼ぶのやめてくれる?あのタコの前以外では先生を演じるつもりも無いし。「イェラビッチお姉様」と呼びなさい」


やっぱり“こっち”が本性か。と言うかまだまだ未来ある子供達の前で吸わないでほしい。


「「…で、どーすんの?ビッチねえさん」」

「略すな!!」


やっぱりハモった。イェラビッチなんて名前を聞いたらそう略しちゃうよね。


「ビッチねえさんって殺し屋なんでしょー?」

「クラス総がかりで殺せないモンスター、ビッチねえさん1人で殺れんの?」

「…ガキが。大人にはね、大人の殺り方があるのよ。潮田渚ってあんたよね?」

「?」


ビッチねえさんが渚君に近付いたと思ったら、いきなり渚君にキスをした。しかもかなり長くて深い。あまりの凄さに渚君は気絶してしまった。あの女は一体どんな神経をしてるんだか。


「後で教員室にいらっしゃい。あんたが調べた奴の情報聞いてみたいわ。ま…強制的に話させる方法なんていくらでもあるけどね」


ビッチねえさんはそのまま渚君を投げ捨てるように離した。渚君大丈夫かな。


「その他にも!!有力な情報を持ってる子は話しに来なさい!良い事してあげるわよ、女子にはオトコだって貸してあげるし」


向こうから現れた3人組の男達は仲間なのだろう。でも中学生に言う言葉じゃ無いのは確かだし、第一あんな醜男は趣味じゃ無い。


「技術も人脈も全て有るのがプロの仕事よ。ガキは外野でおとなしく拝んでなさい。あと、少しでも私の暗殺の邪魔をしたら、殺すわよ」


ああ、この女は嫌いだ。


[12/09/01]






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