放課後になり、校舎から少し離れた崖。その崖っぷちから生えた木の上で、カルマは片膝を折って爪を噛みながら座っている。私はと言うと、渚君の横で彼と一緒にカルマを宥めてみる。


「…カルマ君、焦らないで皆と一緒に殺ってこうよ。殺せんせーに個人マークされちゃったら…どんな手を使っても1人じゃ殺せない。普通の先生とは違うんだから」

「……やだね、俺が殺りたいんだ。変なトコで死なれんのが一番ムカつく」

「……」

「それは分かるんだけどさぁー」

「…さてカルマ君。今日は沢山先生に手入れをされましたね」


ふらりと私達の背後に現れた殺せんせーは、何回見てもムカつく緑の縞模様になってニヤニヤと笑っている。するとカルマは一瞬何か企んだ笑みを浮かべた後、拳銃を手に木の上に立った。嫌な予感しかしない。


「先生ってさ、命をかけて生徒を守ってくれるひと?」

「もちろん、先生ですから」

「そっか、良かった。なら殺せるよ。……確実に」


その瞬間、カルマは自ら木を蹴って身体を投げ出した。あまりのショックに心臓が一瞬止まった気がした。崖から身を乗り出して下を覗くと、殺せんせーの蜘蛛の糸のような触手で助かっているカルマが見えた。安心して一度に気が抜けて身体がふらりと揺らぐと、落ちないようにと渚君が腕を引いてくれた。


「っ!因果さん、大丈夫?」

「…うん、気が抜けちゃって……。本トに、良かったぁ……」


殺せんせーはカルマを抱えて私達の所に戻って来た。無傷で詰まらなそうな表情を浮かべるカルマを見て思わず抱き着いた。


「…カルマのバカぁ……」

「…悪かったよ、」

「……本トにそう思ってるならケーキ奢って」

「ハイハイ」


カルマはくしゃくしゃと私の頭を撫でながら言った。カルマの中で飛び降りたのが一番の策だったらしいが、暫くは計画を練り直すようだ。


「おやぁ?もうネタ切れですか?報復用の手入れ道具はまだ沢山ありますよ?君も案外チョロいですねぇ」


あ、昨日カルマが言った台詞。と言うか殺せんせーの持ってる「超美肌水」欲しい。くれないかな。


「…殺すよ、明日にでも」


そう言ったカルマは吹っ切れたように笑っていた。なんだかそれにほっとしながらカルマの上から退いた。するとカルマは立ち上がってポケットからガマ口の財布を取り出した。…あんなの持ってたっけ。


「帰ろうぜ、因果、渚君。帰りメシ食ってこーよ」

「後ケーキ!」

「ちょッそれ先生の財布?!」


ああ、殺せんせーのか。


「返しなさい!!」

「いいよー」

「な中身抜かれてますけど!?」

「はした金だったから募金しちゃった」

「にゅやーッ!不良慈善者!!」


私だけかもしれないけど、殺せんせーをからかうカルマはどこか楽しそうに見えた。


「ねぇー渚君」

「何?因果さん」

「帰り、渚君は何食べたいー?」

「えっ、僕は何でも良いよ」

「そー?じゃあカルマに決めてもらおっかぁー。デザートは私のお気に入りのお店のケーキねぇー」

「うん、それで良いよ」


なんか青春って感じ。


[12/08/24]






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