あの後カルマに手を出すなと言われたから今日は大人しく見ている事にした。1時間目は数学、簡単過ぎるから学校用に持って来た枕を机に置いて顔を埋める。 「……と、なります。ああ、カルマ君。銃を抜いて撃つまでが遅すぎますよ。ヒマだったのでネイルアートを入れときました」 「……!!」 少し顔を上げてちらりと横を見れば、カルマの爪には可愛らしいネイルアートが施されていた。休み時間になったら除光液でも渡してあげよう。 「因果さん!授業中に居眠りは厳禁ですよ!しかも枕まで持って来て!」 「…えーっ、授業が簡単すぎるんだよセンセー」 「…それならこの問題はどうでしょう?とある国立大学の入試で出されたものです。解けなければちゃんと授業に参加して下さい」 マッハで黒板に書かれた数式。解けるものなら解いてみろ、と言わんばかりにニヤニヤと笑う緑の縞模様の殺せんせー。すっごいムカつく。いくら進学校の生徒だと言っても大学入試問題を出す辺りかなりの臍曲がりだ。面倒臭いけど見返してやりたいから席から立ち上がり、黒板の前に立つ。 「…まさか…解く気ですか……?」 「んーっ…あーっ、」 確かこの問題は……。白いチョークを取って黒板に答えを書く。殺せんせーに視線を投げると、悔しそうに頷いた。 「……正解、です」 「やったぁー、それじゃー私は寝てるねー」 皆が「おおっ」と声を上げてくれた。日頃の行いが悪いからそれを補う為に勉強だけはしておいたけどそれが役に立った。軽い足取りで自分の席に座り、今度こそ枕に顔を埋めて眠りについた。 「――…因果、起きてよ」 「……うーん、なーにぃ?カルマぁー」 「コレ、落としたいんだけど」 「あぁー…鞄の中にある黒いポーチに入ってるから勝手に取ってぇー。…私はもーちょっと寝るか、ら……」 *** 「――…因果さん、因果さんっ……!」 「……おーっ、渚くーん。おはよぉー、」 「…おはよ…もう4時間目だよ?」 「…じゃーお昼になったら起こしてー……」 うとうとしていたら渚君が肩を揺らしてきた。ぼんやりとする頭で話を聞いてると、4時間目は家庭科でスープを作るらしく同じ班の私にも授業に出て欲しいようだ。…渚君の頼みなら仕方が無い、欠伸を噛み締めながら立ち上がって渚君と家庭科室に向かった。 三角巾とエプロンを着け、班の中でも主に私が説明された通りの手順でスープを作っていると、手際が良いと殺せんせーに褒められた。取り合えず出来上がり、渚君や班の人に飲んで貰ったら美味しいと言ってくれた。 「烏間センセーも飲んでみてーっ」 「…良いのか?」 「どーぞどーぞ」 壁際で授業の様子を見ている、と言うより殺せんせーを監視している烏間先生にもスープを飲んで貰う。 「どー?」 「ああ、美味い。良く出来てるな」 「良かったぁー」 うん、褒められるとやっぱり嬉しい。こうして間近で見ると烏間先生格好良いな、なんて。向こうではカルマが仕掛けたみたいだけど、逆に可愛い三角巾とエプロンを着させられていた。記念に写メ撮っておこう。 5時間目は国語。殺せんせーの音読している声も私にとっては心地好いBGMに過ぎない。うとうとしていると、隣ではカルマが殺せんせーに“手入れ”をされていた。音読していた「赤蛙」はまるで殺せんせーの心情のようだった。 [12/08/21] |