学校を出た後、特に何をする訳でもなくカルマと二人で駅構内を彷徨(うろつ)いていた。構内のコンビニで復刻版として販売されていた瓶のコーラとスプライトを買い、二人並んで飲みながら歩いていると、E組だからと笑われている渚君を見付けた。


「あっ渚君だぁー」

「……」


カルマはそのまま渚君を笑う奴等へと脚を進める。やり過ぎてまた停学にならなきゃいいけど。


「――…うっわ最悪、マジ死んでもE組(あそこ)落ちたくねーわ」

「えー死んでも嫌なんだ。じゃ、今死ぬ?」


カルマは持っていたコーラの瓶を男の真横で柱に叩き付けて嘲笑った。今まで人を小馬鹿にしていた奴等は一転して恐怖で顔を歪めながら慌てて逃げていく。


「あはは、殺るわけないじゃん」

「やっほぉー渚君っ」

「…カルマ君、因果さん」

「カルマぁー、随分控えたねぇー?」

「ずっと良い玩具があるのに、また停学とかなるヒマ無いし」


うん、まあそこはカルマと同意見。カルマの後ろを付いて行きながら改札口を通る。


「――…あの先生さぁ、タコとか言ったら怒るかな?」

「…タコ?うーん、むしろ逆かな」


渚君曰く、殺せんせーの自画像やゲームの自機なんかはタコらしい。更に校庭に潜って顔だけ出してタコつぼ、なんて一発ギャグを披露するぐらいタコはトレードマークのようだ。……あ、くだらない事思い付いた。実行に移す気はさらさら無いけど。


「…そ〜だ、くだらねー事考えた」


隣のカルマがそう言ったけど、絶対同じ事思い付いた筈。だって双子だし。


「…俺さぁ、嬉しいんだ。ただのモンスターならどうしようと思ってたけど、案外ちゃんとした先生で。ちゃんとした先生を殺せるなんてさ。前の先生は自分で勝手に死んじゃったから」

「……?」


渚君は不思議そうな顔をしてる。まあ今のじゃ意味分かんないもんね。渚君と別れた後、カルマが魚屋に寄って行くと言い出したから仕方無く魚屋に寄った。


「…生臭いのは嫌いなんだけどー」

「因果だって同じ事考えたんじゃないの?」

「まぁーそーだけどさぁ」


少し離れた所でカルマが生タコを買っているのをぼんやりと眺めていた。タコ代はさっき電車の中で私に触って来た奴から“快く貰った”やつだから無駄になっても良いのか。


「じゃ行こうか因果」

「んーっ」



***



登校したら生徒は疎(まば)ら、殺せんせーはまだ来てない。カルマは昨日買ったタコを教卓の上に置いてナイフで一突き。


「なっ何してるの?!二人共!」

「あ、おはよう渚君」

「おはよぉー渚君。因みにやってるのはカルマであって私は無関係ぇー」


渚君も今し方来たばかりの茅野?さんも、と言うよりこの場にいるクラスメイト全員が冷や汗をかいている。それでもお構い無くタコは放置、殺せんせーが来るまで適当に時間を潰した。


「――…おはようございます。…ん?どうしましたか皆さん?」


漸く来た殺せんせーが教卓の上のタコに気が付いた。


「あ、ごっめーん!殺せんせーと間違えて殺しちゃったぁ。捨てとくから持ってきてよ」

「……わかりました」


殺せんせーは素直にタコを持ってこちらへと向かってくる。カルマは接近した所をナイフで殺るつもりだった様だけど、突然殺せんせーの触手がドリルに変わった。そして白い紙袋と自衛隊から奪ったらしいミサイルを持ち出して何かをし始めた。


「先生は暗殺者を決して無事では帰さない」


そう言った瞬間、カルマの口にはたこ焼きが。良いな、食べたい。けどカルマは余りの熱さにたこ焼きを吐き出して上着の裾で口を拭う。私は余程物欲しそうな顔をしていたのか、殺せんせーがドリル触手にたこ焼きを一つ刺して差し出してくれた。ありがたく頂くと普通に美味しかった。殺せんせー意外と料理上手。


「――…放課後までに君の心と身体をピカピカに磨いてあげよう」


あ、今の挑発でカルマの“スイッチ”入ったかも。


[12/08/20]






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