「殺せんせー、お昼食べよーよ。お弁当作ってきたからさぁ」

「おや、いいんですか?」

「気にすることないよ。こいつ、馬鹿みたいに大量に作ったから」

「因果さんの手作りとは、楽しみですねぇ」


お弁当を鞄から出したところで手ぶらで来たイリーナが寄ってきた。カルマの言う通り多めに作ったからいいんだけど。烏間先生は財布を片手にこの場から離れようとしていた。多分近くで何か食べるか、買ってくるつもりなのだろう。


「烏間センセー!センセーも一緒にお昼食べよ?」

「これから買いに行こうかと思ったんだが……」

「大丈夫(だいじょーぶ)!私お弁当作ってきたからぁ、ね?殺せんせーとイリーナはもう食べてるよー」

「……因果がそう言うなら、頂くとしよう」

「どうぞどうぞー」


既にお弁当を広げる三人の元へと烏間先生を連れていく。


「あらカラスマも来たの?意外と美味しいわよ、因果の手料理」


余程料理が出来ないと思われていたのか。そりゃあ寿美鈴と比べられたら勝てないと思うけどさ。少しむっとしてイリーナに反論しようとしたら、先に烏間先生が口を開いた。


「そんなことお前に言われなくとも、因果が料理上手なこと位知っている」

「!」

「なんでアンタがそんなこと知ってるのよ」


先生の思いがけない言葉には驚くしかなく。イリーナは箸を片手に不思議そうに首を傾げているし、殺せんせーは食べる手を止めてニヤニヤしながらノートに何かを書いている。この場をどうにかしようとカルマに助けを求めたが、自分の食べる分だけ持って渚君や杉野の方へ行ってしまった。面倒だと思って逃げたな、あいつ。


***


「ところで、烏間先生と一緒にご飯食べてたけど……そこら辺の話お姉さん詳しく聞きたいなあ」


お弁当を食べ終え、莉桜と一緒に本校舎のトイレに行った帰り。殺せんせーと同じようにニヤニヤ笑いながら肩に腕を回してきた。どうやって誤魔化そうか……。


「普通にお弁当分けただけだってぇ。殺せんせーとイリーナにも……」

「赤羽因果」

「…浅野、」

「ちょっといいか」


人通りの少ない校舎裏で呼び止められた。彼の取り巻きとも言える五英傑はいない。莉桜は彼を見るなり「先に行ってるから」と走って観客席に戻ってしまった。気を使ってくれたんだろうけど、あまり有り難くはない。


「それでぇ?生徒会長サマがE組の私に何か?」

「君に助言をしておこうと思ってね」

「なにそれ」

「午後の棒倒しの為に救急箱……いや、救急車を手配出来る準備をしておいた方がいい」


本ト、腹立つ。私を挑発してどうするんだか。それともただ突っ掛かる口実?……きっとそうだ。


「ご忠告どーも。……でも、準備が必要なのはそっちかもよお?」

「……」

「じゃーね」


眉間に皺を寄せて不機嫌になりつつある浅野とこれ以上一緒に居たくはない。背を向けて席に戻ろうとしたその時、後ろから右腕を掴まれた。


「!」

「用件はまだある。E組の担任……烏間、だったか。あの男とは一体どんな関係だ」

「なに、言ってんの。生徒と担任に決まって、」


全てを見透かすような瞳で見詰められ、うまく言葉が出なかった。浅野がこんな話を切り出してくるなんて、さっきの様子を見られていたのだろうか。


「いいや、違う筈だ。君はあの男が、」

「因果ッ」

「!」

「センセー……!」


私の気持ちに土足で踏み込もうとしてくる浅野の声を遮ったのは話題の中心人物で。手を振り払い、烏間先生の元へ行く。


「もう時間になる。そろそろ戻った方がいい」

「……んー、分かってる」


先生が来たことにより、浅野は潔くこの場を去って行った。まだ何か言いたげな視線を向けられたけど、お互い同じ位のタイミングで目を逸らした。


「すまない、邪魔したか?」

「大丈夫(だいじょーぶ)。むしろ声かけてくれて助かったよー、ありがとセンセ。でもどーしてここに?」

「飲み物を買おうと思ってな。一番近い自販機がこっちにあると聞いたんだが……」

「あー、あるねえ。案内するよー」


烏間先生に呼ばれた時、もしかしたら私を探しに来てくれたんじゃ、なんて自惚れてしまった自分が恥ずかしい。それでも浅野からは逃げれた訳だし、感謝しないと。


「因果」

「んー?」

「……いや、何でも無いんだ。忘れてくれ」

「?」


烏間先生は何か言いたそうにしていたけれど、聞いても答えてはくれなかった。


[16/03/22]






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