「棒倒しぃ?なにそれ初耳なんだけど」


カルマとの対戦ゲーム中に告げられたのは体育祭のこと。突然だったから操作が少し遅れ、ダメージを食らってしまった。

知らぬ間に体育祭でA組と棒倒しで対決することになっていたようで。どうやら磯貝のバイトがキッカケらしい。浅野的にはテスト前にE組を潰す大義名分が欲しかっただけだろうけど……。


「ま、向こうがどんな手を使って来ようが、俺達が勝つけどね」

「頑張ってよねぇ。磯貝のバイトが掛かってる訳だしー」

「当然。ついでにこの勝負も勝つよ」

「あぁっ……もー!もっかいやろ!」

「ハイハイ」


因果は本ト弱いよねぇ、なんてバカにされながらコンテニューボタンを押した。


***


「唐揚げは?」

「いれたー」

「玉子焼き」

「甘めにしといたぁ」

「お握り」

「梅と昆布とー…あとのりたま」

「デザート」

「え?いるのー?」


体育祭当日。大きめのお弁当箱におかずを詰めていると、寝起きのカルマによる中身の確認が始まった。普通にコンビニで適当に買って食べるつもりだったのに、突然弁当がいいと言われればしょうがないから作るしかなく。


「なんだ、結構気合い入ってんじゃん」

「まあねー」


どうせ作るなら烏間先生にも食べてもらおうと思ったから……なんてことは言葉にはしない。言わなくてもカルマにはバレてる気がするけど……。

それから支度をして作ったお弁当を忘れずに持ち、二人で学校へと向かった。


***


四方から声援が飛ぶ。熱気に包まれた本校舎のグラウンドは、まさに体育祭といった様子だ。


「負けるな我が校のエリート達!!」


響く実況は絶対にE組とは言わず、こんな時でも相変わらずのアウェイ感。しょうがないと言えばしょうが……。


「ふぉぉカッコいい木村君!!もっと笑いながら走って!!」


いや、いた、私達の味方。布を被って自前のカメラで連写する殺せんせー。観客席が近いから迫力ある競技を間近で観れて興奮しているようだ。

トラック競技はE組でも俊足を誇る木村が一位を取るが、他の皆は二位止まりで、やはり陸上部には簡単には勝てない。けれどパン食い競争では寿美鈴が驚異の喰いっぷりをみせて一位を取った。


「因果、行くよ」

「はーい」


次は二人三脚だ。カルマと私、前原とひなたが出場だ。四人でスタート地点に向かう。


「前原ぁ、この機に乗じてひなたにセクハラしちゃダメだからねぇ?」

「頼まれたってしねーよ。するならもっとこうキレイな姉ちゃん(ちゃんねー)をだな……」


そこまで言った前原はひなたの蹴りによって地面に崩れた。その様に隣のカルマは笑っている。

先にスタートした二人の後ろ姿を見ていると、ひなたの「セクハラ!!」という声が聞こえてきてまた笑った。少し気になってE組の観客席を見てみると、烏間先生と目があった。すると先生の口が「頑張れよ」と動いたのが分かり、嬉しくて自然と笑みが溢れた。


「なにニヤケてんの」

「っニヤケてないー」


すぐに否定したけれどカルマに視線の先を探られてしまいバレてしまった……。


「…ま、いいけどさ。あっちに気取られて転ぶなよ」

「大丈夫(だいじょーぶ)。それに、転びそうになったらカルマが支えてくれるでしょー?」


そう言って笑うと、カルマは面食らったと思えばすぐに笑ってみせた。気持ちを切り替えてスタートラインに立つ。折角先生に応援して貰った訳だし、前原とひなたに続いて私達も一位を取らないとね。


***


他の組をかなり離して一位でゴールした。まあE組は出れる競技が限られてるからどれだけ上位に入っても総合優勝は無い。それでも訓練で鍛えた力は意外な所で発揮され、障害物競走ではカエデが一位を取った。体に抵抗が無いから網抜けが速いとか言われてたけど……。


「棒倒しにさえ勝てば、磯貝君のバイトの事は咎められない。お願いね男子、腹黒生徒会長をぎゃふんと言わせてやって」


メグの言葉に男子の反応は鈍い。皆少なからず緊張しているのが目に見えて分かる。刻々と時間は過ぎていき、着実に午後の棒倒しへと近付いていく。

けれど腹が減ってはなんとやら。団体競技が続く午後の部の前に、まずは昼食だ。


[16/03/14]
title:水葬






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