急いでトラックの後を追うと、前方で一際明るい場所が。聞こえてくる発砲音。全く、こんな所で打ち出すなんて近所迷惑もいいところだ。 シロ達が殺せんせーとイトナに気を取られている隙に、数人が木に登って発砲している奴等を蹴り落とすことになった。落とした奴等は下で受け止めて簀巻きにするらしい。 「さてと、行くよ因果」 「りょーかい」 カルマや前原と共に軽々と木を登り、発砲を続ける白い服の男たちの元へ。そして遠慮せずに蹴り飛ばす……! 「なっ…」 「はい簀巻き簀巻き〜」 「…!!」 「一丁上がりと」 下では計画通りに動いてくれているため、こちらとしても安心して突き落とせる。 「くっ…生徒(ガキ)共が!!返り討ちに…」 「ダメだよ。烏間先生に追われるばっかで、こっちだって悔しいんだから」 「うおおっ!?」 「このケイドロは、あんた達が泥棒側ね」 見習いたい程の軽い身のこなしで最後の一人をひなたが落とした。 「……!!」 「…おまえら、なんで…」 「カン違いしないでよね。シロの奴にムカついてただけなんだから。殺せんせーが行かなけりゃ私達だって放っといてたし」 流石のシロも私達の動きは想定外だったのか、珍しく隙が出来ている。 「こっち見てていいの〜シロ?撃ち続けて殺せんせーを釘付けにしてたのに、撃つのやめたら…ネットなんて根本から外されちゃうよ」 「もー遅いけどねぇ?」 殺せんせーは既にトラックの荷台に取り付けられたネットを根本から外し、磯貝や前原がイトナの元へ。 「去りなさいシロさん。イトナ君はこちらで引き取ります。あなたはいつも周到な計画を練りますが…生徒達を巻きこめばその計画は台無しになる。当たり前の事に早く気付いた方がいい」 「………………」 少しの無言のあと、シロはまた口を開いた。 「モンスターに小蠅たちが群がるクラスか、大層うざったいね。だが確かに、私の計画には根本的な見直しが必要なのは認めよう」 「………」 「くれてやるよ、そんな子は。どのみち2〜3日の余命。皆で仲良く過ごすんだね」 そう言って、シロは部下を回収して去ってしまった。 さて、弱りきったイトナをどうやって助けるか。殺せんせーによると、触手をこのままにしておくとどんどん衰弱していき、最後は触手もろとも蒸発して死んでしまうらしい。流石にそれは可哀想だ。 「後天的に移植されたんだよね?」 「ええ」 「なんとか切り離せないのかな」 「彼の力への執着を消さなければ。そのためには…そうなった原因をもっと知らねばいけません」 イトナが素直に自分の過去を話すとは思えない。そんな時だ。優月はイトナがケータイショップを襲ったことが気になっていたらしく、律に色々と調べてもらったらしい。 「そしたら、「堀部イトナ」ってここの社長の子供だった」 「「…!?」」 スマホに表示されたページには、堀部電子製作所の文字が。世界的にスマホの部品提供していた町工場は一昨年倒産、社長夫婦は息子を残して雲隠れ。イトナが力や勝利に固執する理由がなんとなく分かった気がする。 「ケ、つまんねー。それでグレただけって話か」 「寺坂!」 「皆それぞれ悩みあンだよ。重い軽いはあンだろーがよ。けどそんな悩みとか苦労とか、わりとどーでもよくなったりするんだわ」 意外、寺坂が動くなんて。いつもの三人を引き連れて、まだ意識の戻っていないイトナの襟首を強引に掴んだ。 「俺等んとこでこいつの面倒見させろや。それで死んだらそこまでだろ」 [15/10/05] |