『椚ヶ丘市内で携帯電話ショップが破壊される事件が多発しています!!あまりに店内の損傷が激しいため、警察は複数人の犯行の線もあると…』


必死に説明するアナウンサー。律の画面には、携帯電話ショップ破壊のニュースが流れている。多分、犯人はイトナだろう。


「……ええ。使い慣れた先生にはわかりますが、この破壊は触手でなくてはまず出来ない」

「…どうして携帯ショップばっかりを?」


みんなも思ったであろうその疑問の答えが出ることは無く。


「担任として責任を持って彼を止めます。彼を探して保護しなければ」


「………」

「助ける義理あんのかよ殺せんせー」

「つい先日まで商売敵だったみたいな奴だぜ」

「あいつの担任なんて形だけじゃん」


否定的な反応が多い。まあこれまでの事を考えるとそうなるだろう。


「ん」

「……んー」


隣のカルマが手を差し出して来た。自分の鞄から今朝買ったイチゴ煮オレを取り出して手渡す。これくらいのやり取りなら無駄な言葉は要らない。

カルマの様子から察するに、カルマもイトナは放っといた方が良いとか思ってるんだろうな。


「…それでも担任です。「どんな時でも自分の生徒から触手(て)を離さない」先生は、先生になる時誓ったんです」


***


「勝ちたい。勝てる強さが、欲しい」

「やっと、人間らしい顔が見れましたよイトナ君」


まだ被害に遭っていない市内の店から、次にイトナが襲いそうな所に目星を付けて全員でやって来た訳だけど、ドンピシャだった。無残にも破壊された店内に立つイトナは足元がふらつき顔色も悪い。


「スネて暴れてんじゃねーぞイトナ。テメーにゃ色んな事されたがよ、水に流してやるからおとなしくついてこいや」

「うるさい…勝負だ…。今度は……勝つ」

「もちろん勝負してもいいですが、お互い国家機密の身。どこかの空き地でやりませんか?」


余裕な殺せんせー。いつもの速さで取り出したのか、その触手には用意していたバーベキューの串。よっぽどバーベキューしたいんだね、殺せんせー。


「暗殺(それ)が終わったら、その空き地でバーベキューでも食べながら、皆で先生の殺し方を勉強しましょう」

「お菓子もあるよぉ。甘いもの好きでしょー?」


あの大量のお菓子は殺せんせーの弟設定からくる役作りだったのかも知れないけど、あんなに食べてたんだから嫌いでは無いはず。


「そのタコしつこいよ〜。ひとたび担任になったら地獄の果てまで教えに来るから」

「当然ですよ。目の前に生徒がいるのだから…教えたくなるのが先生の本能です」

「………」


何かが空を切る音が近くで聞こえた。けれどそれを認識した次の瞬間には目の前が真っ白に。粉っぽい何かが店内で舞い上がり思わず咳き込む。

更には聞き慣れた発砲音と、シロの声が微かに聞こえた。苦しむイトナをネットが覆い、外へと引きずり出した。


「大丈夫ですか皆さん!?」

「…多分、全員なんとか」

「では先生はイトナ君を助けてきます!」


すぐさまシロとイトナを追う殺せんせー。その身体は少し溶けていた。


「……俺等を気にして、回避反応が遅れたな」

「…あンの白野郎〜…。とことん駒にしてくれやがって」


分かりやすいくらい全員殺気立っている。勿論シロに対してだ。これからどうするかは、言わなくても分かる。


[15/09/15]






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