「イトナ!!」 突如現れたシロとイトナ。檻の中ではイトナが殺せんせーに攻撃を仕掛けているのだろうか。 「まずフィールドを劇的に変化させ、それから襲う。当てるよりまずは囲うが易し。君達の戦法を使わせてもらったよ」 「シッ…シロ!!これ全部テメーの計画か!!」 「そういう事」 下着ドロや殺せんせーの周囲に現れた不自然な下着など全てシロとイトナがしたことらしい。今回に限っては下着ドロの代役が必要だったため、鶴田さんにやらせたと言うのだ。 「くっそ…俺等の標的(エモノ)だぞ」 「…いっつもいやらしいとこから手ぇ回して…!!」 「それが大人ってものさ。そうだ!中の様子が見えないと不安だろう。私の戦術を細かく解説してあげよう」 囲っているのは対先生繊維の強化布で戦車の突進でも破けないくらい丈夫だとか、イトナの触手には対先生物質で出来たグローブが装着してあるとか。色々と教えてくれるが、結局殺せんせーに勝ち目は無いと言いたいようだ。 私達にはどうすることも出来ず中の見えない檻を見守っていると、突然中から光が漏れだし、凄まじい爆風と共に囲いが吹き飛んだ。飛ばされないようにその場で踏ん張る。 「っ…因果、無事?」 「な、なんとかねぇ」 飛ばされたイトナは殺せんせーが受け止めた。 「彼をE組に預けておとなしく去りなさい。あと、私が下着ドロじゃないという正しい情報を広めて下さい」 「私の胸も正しくはび、Bだから!!」 そういうカエデの後ろにAと見えるのは私だけかな……。 「い…痛い。頭が痛い。脳みそが裂ける…!!」 「!?」 絞り出すような声。イトナが頭を抱えて苦しみ出した。…見ているこっちまで苦しくなってきた。 「度重なる敗北のショックで触手が精神を蝕み始めたか。ここいらがこの子の限界かな。これだけの私の術策を活かせないようではね」 頭巾で表情は見えないが、シロの言葉は実に冷めたものだ。 「君に情が無いわけじゃないが。次の素体を運用するためにも…どこかで見切りをつけないとね。さよならだ、イトナ。あとは1人でやりなさい」 踵を返したシロ。…イトナを切り捨てたってこと?そんな、呆気なく簡単に……。 「待ちなさい!!あなたそれでも保護者ですか!!」 「教育者ごっこしてんじゃないよモンスター。何でもかんでも壊す事しかできないくせに」 シロはその場で立ち止まり、振り返った。 「私は許さない。おまえの存在そのものを。どんな犠牲を払ってもいい。おまえが死ぬ結果だけが私の望みさ」 言葉の端々から殺せんせーへの憎しみが感じ取れた。 「それよりいいのかい?大事な生徒を放っといて」 シロは白装束を靡かせて去って行き、イトナもまた、まるで獣のような唸り声を上げて何処かへと行ってしまった。 「「……!!」」 *** 登校すると頭に大きなたんこぶが出来た鶴田さんと廊下ですれ違った。なんでも昨日の一件で烏間先生に叱られたそうだ。…かなり痛そうだったし、私もあんまり怒らせないようにしよ。 「わ、悪かったってば殺せんせー!」 「俺等もシロに騙されて疑っちゃってさ」 教室ではみんなが殺せんせーに謝っていた。それでも殺せんせーは口を尖らせて拗ねた反応を見せる。 「心配なのは姿を隠したイトナ君です。触手(この)細胞は人間に植えて使うには危険すぎる。シロさんに梯子を外されてしまった今…どう暴走するかわかりません」 結局あの後、誰もイトナを見つけることは出来なかった。 「名義上はクラスメートだけどさ、俺等あいつの事何も知らねーよな」 強さにこだわる理由も、触手を持つに至った経緯も、確かに何も知らない。けど、心配なのに変わりはない。 [15/09/14] |