いつも通りカルマと登校すると、皆が毒日新聞を広げてざわついていた。


「渚君おはよ。朝からなんの騒ぎ?」

「あ、カルマ君、因果さん。おはよう」

「おはよー」

「実は、」


渚君から新聞を見せてもらうと、そこには下着泥棒の記事が。事件が多発しているらしく、犯人は黄色い頭の大男で現場には謎の粘液が残されており、更には巨乳専門ときた。これらの情報から浮かび上がる容疑者が一人いる。……殺せんせーだ。

最終的に全員が新聞を回し読み、我らが担任に対し不信感が募る。


「今日も生徒は親しみの目で私を見つめ…汚物を見る目!?」


出席簿片手に教室にやって来た殺せんせーに、視線が集まる。軽蔑の眼差しにうろたえる殺せんせーに新聞が渡される。


「ちょ、ちょっと待って下さい!!先生まったく身に覚えがありません!!」


必死に容疑を否定する殺せんせーに対し、凛香がアリバイを問う。しかしマッハ20を誇る殺せんせーのアリバイなど誰にも証明出来る筈もなく。

みんなから責められる殺せんせーを庇ったのは磯貝だ。けれど過去の煩悩を上げていくにつれ、磯貝も殺せんせーを信じられなくなったようで。


「…先生、正直に言って下さい」

「い、磯貝君まで!!」


唯一の味方もいなくなった殺せんせーは、今から机の中のグラビアを捨てると宣言した。みんなで着いていき、教員室へ。


「見なさい!!机の中身全部出し……て…」


大量に出てくるグラビアに混じって殺せんせーが引き上げたのは紛れもなくブラで。


「……!!」

「…マジか…」

「ちょっと!!みんな見てクラスの出席簿!!」


慌ててやって来たひなたに言われて出席簿を覗くと、女子のカップ数が書かれていた。私の名前の横にもご丁寧に、Dが×で消されてEと書き直されていた。カエデだけ永遠の0となっており、本人は泣きながら抗議している。

殺せんせーは今からバーベキューをしようと言い出し、慌ててクーラーボックスを取り出した。


「放課後やろうと準備しておいたんです!!ホラ見てこの串!!美味しそ〜で……しょ…」


その中から出てきたのは、串に刺さったブラだった。


「…やべぇぞこいつ…」

「…信じらんない」

「「不潔…」」


突如降って沸いた…殺せんせード変態容疑。


***


「きょ、今日の授業は…ここまで…」


最後の授業を終え、とぼとぼと教室を出ていく殺せんせー。誰一人として殺せんせーに声をかけることはなく。あの後ろ姿を見るとなんだか可哀想になってきた。


「あっはは、今日1日針のムシロだったね〜」

「ねー」

「居づらくなって逃げ出すんじゃね?」


でもこれで逃げ出されたら、それこそ地球の未来は無い。鞄に教科書やらノートやらを詰め込んでいると、本当に殺せんせーが犯人なのかを疑う渚君がカルマの所にやってきた。


「でもさ、仮に俺がマッハ20の下着ドロなら、急にこんなボロボロ証拠残さないけどね」


そしてカルマが取り出したのはブラをしたバスケットボール。ある意味手が込んでる。


「あの教師バカの怪物にしたら、E組(おれら)の信用を失う事をするなんて…暗殺されんのと同じ位避けたい事だと思うけどね」

「…うん、僕もそう思う」


と、なると。犯人は別にいると言うことになる訳で。そこに現れたのは話を聞いていたらしい優月だ。


「にせ殺せんせーよ!!ヒーロー物のお約束!偽者悪役の仕業だわ!!」


少年漫画が好きな優月は珍しく興奮した様子で言い、犯人は殺せんせーを真似ていることから、それらの情報を得た何者かだと推理した。


「いずれにせよ、こういう噂が広まる事で…賞金首がこの街に居れなくなっちゃったら元も子もない。俺等の手で真犯人ボコッて、タコに貸し作ろーじゃん?」

「賛成(さんせー)」


出席簿に永遠の0と書かれたカエデはまだ根に持っているようで、殺意がひしひしと伝わってくる。普通に帰ろうとしていた寺坂も巻き込み真犯人探しが始まった。


***


「ふふふ。体も頭脳もそこそこ大人の名探偵参上!!」


夜、六人で芸能プロの合宿施設に忍び込んだ。現在この施設では巨乳を集めたアイドルグループが合宿を行っているらしく、真犯人なら獲物を見逃す訳がない。

……でも、近所で事件が多発してる中でわざわざ夜に洗濯物干すかな、普通。


「ねー、カルマぁ」

「ん?」

「あのさぁ、」

「!」


渚君達が反対側の茂みに潜む殺せんせーを見つけた。私達と同じ考えでここに来たんだろうけど、格好はどう見ても盗む側だ。…殺せんせーってちょっとズレてるよなぁ。


「見て!!真犯人への怒りのあまり下着を見ながら興奮してる!!」

「あいつが真犯人にしか見えねーぞ!!」


その時、カルマが壁を越えて敷地に侵入してきた人物に気付いた。黄色いヘルメットの大男。素早い身のこなしで下着へと一直線へと向かう。やっぱり真犯人は別にいた……!


「捕まえたー!!」

「!!」


下着に手を掛けた真犯人を殺せんせーが取り押さえた。


「よくもナメたマネしてくれましたね!!押し倒して隅から隅まで手入れしてやるヌルフフフフフ」

「…なんか、下着ドロより危ない事してるみたい」

「笑い方も報道されてる通りだしね」

「見苦しー絵面ぁ」

「顔を見せなさい偽者め!!」


そして殺せんせーが真犯人のヘルメットを奪い取ると、見覚えのある顔が 現れた。烏間先生の部下の鶴田さんだ。


「なんで…あなたがこんな…」


この場の誰もが真犯人の正体を信じられずにいた次の瞬間、洗濯物が干されていた物干し竿が形を変えた。白いシーツで出来た囲いの中に消えた殺せんせー。


「国にかけあって烏間先生の部下をお借りしてね。この対先生シーツの檻の中まで誘ってもらった。君の生徒が南の島でやった方法だ。当てるよりまずは囲むべし」

「さぁ、殺せんせー。最後のデスマッチを始めようか」


[15/09/14]






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