「因果!一緒に帰ろ!」 「んー、いーよぉ」 放課後、カエデに誘われた。それから渚君と杉野、カルマにも声をかけていつも通りのメンバーで一緒に帰る。途中杉野の提案で蕎麦屋へ。 「カルマ君と因果さんは決まった?」 「「ざるそば」」 これまたいつも通り息の合った返答に、渚君達は笑っていた。 食べ終えて一服していると、テレビから出荷されずに廃棄される卵のニュースが流れてきた。 「ま…生鮮食品はたまにあるよね、こーいう事」 「とはいうけどなぁ…」 「勿体なぁい」 今回に限り、然ほど関心を持たずにいつも通りニュースを聞き流す、ということにはならなかった。 *** 「というわけで!!廃棄される卵を救済し、なおかつ暗殺もできるプランを考えました!!」 あれから一週間。意気揚々と計画書を持つカエデに促されるまま校庭に出ると、プリンの形をした透明な容器のような物や機材やらがいつの間にか用意してあった。 「あの形に卵って…まさか」 「そう、今から皆で巨大プリンを作りたいと思います。名付けてプリン爆殺計画!!」 プリンの底に対先生弾と爆薬を仕込み、殺せんせーが食べ進めた時に爆破する計画だ。 「…やってみる価値あるかもな」 「殺せんせー、エロとスウィーツには我を失うとこあるもんな」 「後方支援に徹してた茅野が…前に出て計画してるのも意外性がある」 「よっしゃ、先生のいないこの三連休で勝負に出るか!!」 そうして始まった巨大プリン作り。カエデの指示に従いながら作業を進める。科学的に根拠があり、更に味の研究もしているので、皆は驚いている。 「やるねー茅野ちゃん。卵のニュースから一週間の間にこれ全部手配したの?」 「うん…っていうか、前から作ってみたかったんだ」 費用や大掛かりな手配は全て防衛省持ちらしい。烏間先生は請求書片手に頭を抱えていた。 「そうと決めたら一直線になっちゃうんだ…私」 あまり自分から暗殺を行わずにサポートに徹していたカエデしか知らないから、こんなに行動力があるとは思わなかった。 「カエデぇ、味変わり食べてみたーい」 「それなら余った材料で一口サイズを作ったから食べてみて!」 「やった!」 カエデから貰った一口サイズのカラフルな味変わりは美味しかった。まだあるし、皆に配って来ようっと。 *** そして三連休中に皆で力を合わせて作った巨大プリンが完成した。かなりの出来映えだ。写真撮っとこ。 「……こ、これ全部先生が食べていいんですか?」 「どーぞー」 「もったいないから全部食べてね〜」 殺せんせーを煽ったあと、皆で教室に撤収する。殺せんせーは感動のあまり泣きながらプリンへと飛び込んだ。出来れば私も食べたかったなぁ。 「カルマぁ、帰りにプリン買ってこーよ」 「良いけど、食べ切れる分ね」 そんな話をしながら起爆を待っていると、カエデが突然絶叫しだした。 「愛情こめて作ったプリンを爆破なんてダメだーー!!」 「ちょ、落ちつけ茅野!!」 あまりにもプリンに情が移ったカエデを寺坂が押さえる。 「カエデぇ、落ち着きなってぇ。もーどーしよーもないよー?」 「殺せんせーに言ってくる!ずーーっとこのまま!!校庭のモニュメントとして飾るんだい!!」 「「腐るわ!!」」 「ふぅ、ちょっと休憩」 冷静な声に振り返ると、そこには爆弾と起爆装置を持った殺せんせーが居た。やっぱり一筋縄ではいかないもので、使用したプラスチック爆弾の匂いに気付いて外したと言うのだ。 「そしてプリンは皆で食べるものですよ。きれいな部分をより分けておきました」 グラスに装ったプリンが全員に配られる。さっきまで泣いていたカエデにも笑顔が戻っていた。 「でも、茅野がここまで徹底してやるとは思わなかった。楽しかったし、意外だったよ」 「ふふ、本当の刃は親しい友達にも見せないものよ。また殺るよ、ぷるんぷるんの刃だったら他にも色々持ってるから」 皆がプリンに夢中になっている隙に、廊下に居た烏間先生の元へ。 「烏間センセー」 「どうした?」 「一口どーぞ」 プリンを掬ったスプーンを烏間先生の目の前に差し出すと、先生は少し躊躇ったあと私の手からスプーンを取り、更にはそのプリンを手に移してから食べた。本当ならそのまま食べて欲しかったのに。鈍感な癖に間接キスになるのは分かったようだ。 「ああ、旨いな」 「良かったぁ」 「……因果、」 「んー?」 「以前言っていたサバイバルゲームの店には今も行っているのか?」 「?行ってるけどー……それがどーかしたの?」 「いや、いいんだ。気にしないでくれ」 そう言って烏間先生は教員室に戻って行った。気にするなと言われてもなぁ……何かあったのかな。 [15/03/28] |