渚君からの返信にはあの怪物“殺せんせー”についての情報が書かれていた。必要になるかは分からない殺せんせーの弱点を読んでいたら余りの可笑しさについ笑ってしまった。


「なに笑ってんの?」

「んー?あの先生についてちょっと聞いたの」


持っていたスマホをカルマに渡すと、メールを読んで愉快そうに口角を上げる。


「…へぇ、殺せないから殺せんせー、ね」

「来週から学校だけど…すぐに仕掛けんのー?」

「当然、でもまだ考え中」

「ならさ、支給されたナイフ細かく切って手に貼り付けて握手するってのはー?初対面だし油断すると思うんだよねぇ」

「それ良いカモ。じゃ〜さ、俺が握手するからその隙に因果は後ろから撃ってよ。お気に入りのエアガンでさぁ」

「分かったー、んじゃライフルにしようかなー」


趣味で集めているエアガン、その中でも私の好きなライフル銃に支給されたBB弾とかから作ったオリジナルのライフル弾を装填させれば標的にダメージを与えられる筈。一緒に渡された拳銃はホルスターに入れて太股にでも着けておけばいいか。



***



「……ねむい、」

「これから先生を殺るんだからシャキッとしてよ」

「んー…あ、コンビニ寄ってこーよぉ。お腹空いたぁー」


眠たくてふらふらになりがら歩いていると、カルマに手を繋がれた。余程ふらついていたんだと思う。私のリクエストで駅前のコンビニに立ち寄り、コーヒー牛乳とメロンパンを買った。因みにカルマはイチゴ煮オレだけ。昼食のメロンパンを頬張りながらカルマに手を引かれて学校へ向かう。着く頃には5時間目が終わっているだろうけど、今日は様子見だから気にしない。砂糖でベタつく指先を舐めてからコーヒー牛乳にストローを刺して口に含む。


「因果、学校に着いたよ」

「…ん、5時間目は体育だから外にいると思うよぉー」


うとうとしていたらいつの間にか学校に着いていた。ボロボロの薄汚い校舎の横を通ってグラウンドに出る。丁度授業が終わったようで、ジャージ姿のクラスメイト達がこちらに向かって歩いて来ている。その奥には手配書の通り丸いタコのような生物が。


「……」

「…いたね、殺せんせー」


「目、恐いよ」なんて隣でカルマが言った。あんな面白そうな標的を見たら眠気なんてどこかに吹き飛んだ。全体を眺めていると、先生の情報をくれた渚君と目が合った。


「……!カルマ君…因果さん…帰って来たんだ」

「「よー渚君久しぶり」」


口を開けばカルマとハモった、まあよくある事だ。打ち合わせ通りカルマが殺せんせーに接近する。警戒している様子は無い。


「赤羽業君と因果さん…ですね。今日が停学明けと聞いてました。初日から遅刻はいけませんねぇ」

「あはは、生活リズム戻らなくて。赤羽が二人いるとややこしいから下の名前で気安く呼んでよ。とりあえずよろしく先生!!」

「こちらこそ、楽しい1年にしていきましょう」


カルマが殺せんせーと握手した瞬間右の触手がいとも簡単に溶け出し、私もケースに入れて肩に掛けていたライフルを瞬時に取り出して左の触手を撃ち抜いた。更にカルマが手首に隠し持っていたナイフで襲い掛かるも避けられてしまった。


「…へー本トに速いし本トに効くんだ対先生(この)ナイフ。細かく切って貼っつけてみたんだけど。けどさぁ先生こんな単純な「手」に引っかかるとか…後ろの因果にまで撃たれて…しかもそんなとこまで飛び退くなんてビビリ過ぎじゃね?」


確かに殺せんせーはかなりカルマから間合いを取った。まあ私もいるからかもしれないけど。カルマが話す間にも左右の触手は再生されていく。


「殺せないから「殺せんせー」って聞いてたけど。…あッれェ、せんせーひょっとしてチョロイひと?」


カルマのその言葉に殺せんせーは真ん丸の顔に筋を立てて怒っている。でも渚君の情報通り、感情によって顔色が変わるとか面白い。


「渚、私E組に来てから日が浅いから知らないんだけどあの人達どんなひとなの?」

「…うん、カルマ君とは1年2年が同じクラスだったんだけど。見ての通り双子で、二人とも2年の時続けざまに暴力沙汰で停学食らって…このE組にはそういう生徒も落とされるんだ。でも…今この場じゃ優等生かも知れない」

「…?どういう事?」

「凶器とか騙し討ちの「基礎」なら…多分カルマ君と因果さんが群を抜いてる」


[12/08/18]






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