がやがやと賑わう食堂の一角。風間はひとり黙々とスプーンを進める。今日は「単位がヤバいけどランク戦したいし合コンも行きたい」と下らないことを一方的に言い出す太刀川が居らず静かだ。


「風間くん、一緒に良いかな?」


ふと顔を上げると、そこにはトレイを持った同級生がいた。大学では比較的話すアヤメだ。知らない相手ではない為風間が頷くと、アヤメは「良かったぁ」とほっとしたように向かいの席に座った。


「またカツカレーなんだね、好きなの?」

「まあな」

「それなら商店街にあるお肉屋さんのカツがオススメだよ。…なんて、実は私の実家だったり。カツとコロッケが看板商品なの」


自然に実家の宣伝をするアヤメは小さく笑い、箸を進める。コロッケと聞いて風間の脳裏には一人の男が過った。


「なら太刀川にも教えてやるか」

「タチカワ?たまに一緒にいる?」

「あいつもボーダーだから、大学(ここ)でも絡んでくるんだ」


元々風間がボーダー所属だということは聞いていた為驚きは無いが、たまに見掛ける太刀川もそうだということに意外そうに声を上げた。


「へぇ。強いの?そのタチカワくん」

「個人では一位だ。見掛けによらずな」

「すご!じゃあ風間くんは?」

「…二位だ」


一瞬答えることを躊躇ってしまった。しかしそれを聞いたアヤメはきらきらと瞳を輝かせる。


「すごいじゃん!……だけど、満足してないって顔してる」

「そう見えるか?」

「うん、かなりね」


確かに風間は現状に満足していない。虎視眈眈と一位の座を狙っているのだ。


「そんなに強いならボーダー内外でモテモテじゃないの?」

「太刀川は女の噂が絶えないが…。俺は特に感じたことは無いな」

「えー?それ自分が気付いてないだけじゃなくて?だって風間くん、」


アヤメの言葉を遮るように携帯が鳴った。風間に一言断ってから着信に応じ、何度か言葉を交わしただけですぐに切った。


「もう行かなきゃ。ごめんね、邪魔して」


忙しなく少し残った飲み物を飲み干し、立ち上がってトレイを持った。そして二三歩進んだ所で、思い出したように振り返った。


「あ、そうだ。タチカワくんより風間くんの方が格好いいと思うよ、私は。またね!」


無邪気に笑ってアヤメは食堂を出て行った。風間は前言撤回し、太刀川に店の情報は伏せておこうと心に決めた。



[14/10/23]
アンケートより。
title:微光
   

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