ぺらり、ぺらりと雑誌をめくる音がする。あ、これいいな、なんて呟きながら流行のアイテムを見定める。


「…おい……!」

「んー?なぁに?」


背後からの痺れを切らしたような声に見向きもせずに応えるだけ。そんな彼女の反応に、ベッド上のタクミは更に不機嫌そうに顔を顰めた。


「…雑誌がそんなに楽しいか」

「うん」


ベッドに寄り掛かりながら雑誌を眺め、まるで自分の部屋のように寛ぐアヤメだが、ここはタクミの部屋で。久々に二人っきりになったというのに(イサミは空気を読んで外出中)、彼女は雑誌に夢中で見向きもしない。タクミはそれが不服で仕方がないのだ。昨夜はアヤメが来るのだと人知れず舞い上がり、まるで遠足前の子供のように殆ど眠れなかった。そんなこともあって、今度は自分ひとりが一方的に好きなのではと底知れぬ不安に苛(さいな)まれる。


「……」

「タクミ」


肩を落としてしょんぼりと俯いていると、名前を呼ばれた。ふと顔を上げれば、すぐ目の前にアヤメの顔が。思わず息を呑み、言葉を発しようとした口は彼女の唇に塞がれた。時が止まったような気がした。そして視線を絡ませながらゆっくりと離れる。


「ッ……!?な、なな…なにをしてっ……!」


突然のことに耳まで顔を真っ赤にして吃るタクミとは対照的にアヤメは平然としている。


「だってタクミ、寂しそうにしてたから。構ってあげようと思って」

「べ、別に寂しそうになどしていない…!」

「ふーん…そう」


タクミの強がりを見抜いているアヤメは呟くようにそう言って、彼に背を向けまた雑誌を眺め始めた。


「……アヤメ、」

「……」


弱々しく呼んだところでアヤメは反応してくれない。そしてタクミは意を決して後ろから彼女を抱き締めた。


「ああ、そうだ!君が雑誌に夢中だからオレは寂しいんだ!」

「……最初からそう言えば良いのに」


ふふっと微笑んだアヤメは雑誌を置いて、振り向き、もう一度キスをした。



[14/02/08]
アンケより。着地点が見付からなかった結果がこれだよ←
title:レイラの初恋
   

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