夜が明け、コユリ達は昨夜の謎の少年を捜していた。その少年がネネの弟、ユウである可能性が出て来たからだ。

因みにコユリはまだ元に戻っておらず、トコトコとキリハの隣を歩いている。



「――…捜索隊のリボルモン達から連絡ですぞ!」

「タイキ、見付けたぞ!」

「!」



画面には壊れかけた橋の真ん中に横たわる少年が映っており、それは正しくコユリとキリハが見た子供であった。

通信を終え、急いでその場所に駆け付けると、ただならぬ空気が漂っていた。話によると、リボルモンとモニタモンがユウの罠にかかる所だったらしい。

ユウの傍にいたダメモンがツワーモンへと姿を変え、シャウトモンは驚きを隠せないでいる。



「――…ツワーモン、スモーキンブギだ!」

「御意!スモーキンブギ!」



ツワーモンの煙幕に、コユリはホルダーからXローダーを取り出した。だがその瞬間、橋に絡まっていた蔦(つた)が一斉に動き出してコユリを捕らえた。



「きゃあっ……!」

「コユリ!」



彼女の手からXローダーが滑り落ちる。ツワーモンはユウと同じ様にコユリを抱えた。その腕の中で藻掻(もが)くが、びくともしない。



「ッ…放して!」

「待つんだ、ユウ!そんな奴に付いていくな!」

「コユリを返せ!」

「だって、姉さんに捕まったらゲームオーバーだよ、タイキさん。そしたら、貴方と思いっ切り戦えない」

「っ……?」

「コユリさんは僕が頂いて行きますね。お姫様をプレイヤー同士が奪い合うなんて常識ですよ、キリハさん」

「何を言っているんだ……!」



無邪気な笑みを浮かべたユウ。コユリを取り返す為煙幕の中を走り抜けようとしたキリハだったが、先にネネが駆け出した。

キリハはコユリのXローダーを拾い上げ、悔しそうに下唇を噛み締めた。



「――…やっと二人でお話出来ますね、コユリさんっ!」

「…ユウくん、君はダークナイトモンに操られているんじゃないの……?」

「違いますよ、これは僕の意思です。勿論、今こうしてキリハさんから貴女を攫(さら)ったのも、ね」

「っ……!」



ユウの言葉にコユリは息を呑んだ。少なからずユウがダークナイトモンに操られていると思っていた為、これら全ての行動が彼自身の意思であると言う事が信じられないのだ。



「アハハ、驚いた顔も可愛いですね」

「…どうして私なんかを攫ったりしたの?」

「ずっと前からコユリさんとこのゲームについてお話してみたかったんですっ!普通敵同士でこんな事しませんけど、コユリさんはプレイヤーと言うよりも戦いを見守るお姫様って感じですからね」



ユウは年相応の嬉しそうな笑みを浮かべながらそう言った。その言葉に、コユリは引っ掛かった。



「この…ゲーム…?ユウくん、君は何を言って……」

「DWを賭けて自分の軍を戦わせるなんて、現実世界じゃ味わえないスリル満点のゲームだと思いませんか?僕は凄く愉しいと思いますよ!」



――…DWをゲームの世界だと思い込んでるの……?

ユウの思い違いに気が付いたコユリは、慌てたように口を開いた。



「ッ…それは間違ってる!DWはゲームの世界なんか…じゃっ……、」



コユリの言葉はそこで途切れ、力無く項垂れた。真実をユウに知られては不味いと思ったツワーモンが、彼女に手刀を落として気絶させたのだ。



「あっ、なにするのさツワーモン」

「それは……」

「…まあいいや。大魔殿に戻ったらコユリさんとゲームでもしよーっと!ツワーモン、コユリさんは大事に扱ってよ?」

「御意、ユウ様の御命令ならば"白の君"に手荒な真似はしないでござる」



ダークナイトモンと同じようにコユリを"白の君"と呼んだツワーモンに、ユウが反応を示した。



「なんでツワーモンもコユリさんを"白の君"なんて呼ぶの?」

「ダークナイトモン様がそう呼ばれているから……と言うよりバグラ軍の中でそう呼ぶデジモンが増えてきているからでござるな」

「ふーん……"白の君"って言うよりは"ヴァルキュリヤ"の方が合ってると思うんだけどなー」



ユウは意識を失ったコユリに視線を移しながら、呟くように言った。





捕われて囚われて





------(11/10/11)------
誘拐と気絶に定評のあるコユリです(笑)←

ヴァルキュリヤはワルキューレの単数形の呼び方?になります。ワルキューレは北欧神話に登場する複数の半神の事を言いますが……詳しくはWikiで!←

次回の戦闘シーンは、コユリを救う為にアニメとは若干違う流れで進みます(´`)





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