「……勝てなかった、」



圧倒的な差を見せ付けられての敗北。それはコユリにとって初めての経験だった。

数々の戦場を潜(くぐ)り抜けて来たヒョウルモン達にとって敗北は死に繋がり、常にそれと隣り合わせで戦っている。負けるのは悔しいが、命があれば再戦する事が出来る、ヒョウルモン達はそう思っているが、コユリは違った。

自分の所為で負け、仲間に深い傷を負わせてしまった。そう深く考えてしまい、彼女の表情は暗い。



「……私が、弱かったから」

「ジェネラルが気を病む事は無い。我の仲間は全員助かった、それだけで充分だ」

「リーツァモン、」



Xローダーから聞こえてくるリーツァモンの励ましの声。ピュアグロウとリーツァモンの仲間は全員Xローダーに入っている。静寂が包むアジトで、コユリは一人膝を抱えた。

すると、シキアモンが勝手に出て来て彼女の前に立った。



「……シキアモン…?」

「何でそんなに辛気臭い顔してんの?」

「…だって、私の所為で皆に怪我を……」

「死ぬよりはマシだと思わない訳?」

「それは…そうだけど……」



歯切れの悪いコユリに、シキアモンは眉間に皴を寄せて彼女の胸倉を掴んだ。



「ッ……!」

「負けたのは僕達が弱かった、それだけの話だ!いつまでも私が私がって言ってたら強くなれる訳ないだろ?!」



シキアモンの言っている事は正論で、コユリは自分自身が嫌になり、悔しくなり、いつしか紅の瞳から涙が溢れ出した。



「僕達が負けてもまだこうして生きてるのは、今より強くなって奴を倒し、皆でまた笑いあう為だ!泣いて悔しがる為じゃない!」

「ッ…わ、私はっ……、」

「――…人には泣かせるな泣かせるなって言っといて、お前が泣かせてるんじゃねぇよ」

「全くじゃな。…コユリ、妾(わらわ)達は大丈夫じゃ」

「主(あるじ)が気にする事は何も無いですわ」

「我等はこれからもっと強くなる。強くなって、ジェネラルにこんな思いをさせたりはしない」

「ツヨクナル!ツヨクナル!」



まだ傷が完全に治っていないにも関わらず、無理をしてでもXローダーから出て来たヒョウルモン達。その言葉が嬉しくて、コユリの涙は溢れるばかり。



「…っ皆、ごめんね……。私、今より強くなるから……!絶対にっ…強くなって皆を守ってみせるから……!」

「それはこっちの台詞だ。俺達が強くなってお前を守るさ」

「…ヒョウルモンっ……」



コユリは吹っ切れたように涙を拭った。



「…っ私は大丈夫。もう絶対に揺らいだりはしない」

「……全く、そうじゃないと困るよ。コユリはジェネラルなんだから」

「ありがとう、シキアモン」

「…別に。お礼を言われるような事はしてない」



外方(そっぽ)向いたシキアモンに、コユリは微笑んだ。その時、何かが燃えているような音が、その場にいた全員の耳に入った。



「…何の音……?」

「ッ…ドルビックモンが森を焼いているのじゃ!」

「何だと!ハクシンモン、何でもっと早く言ってくれないんだよ……!」

「こっちに気を取られていただけじゃ……!」

「一旦アジトから出るよ!」



シキアモンの言葉に、コユリはリーツァモンに乗って他のメンバーをXローダーに収めた。

一面に広がっていた森は、今や火の海と下し、コユリは顔を顰(しか)めた。



「我等を炙(あぶ)り出す為に火を付けたようだな」

「っ……酷い。…早く消さないと……!」

「無理を言うなジェネラル。ここまで広がってしまった以上……」

「消す事は不可能だ」

「ッドルビックモン!」



背後から現れたドルビックモンに、リーツァモンは更にスピードを上げた。



「リーツァモン?!」

「この炎の中では戦えない!もっと広い所へ……!」

「逃がさん!」



ドルビックモンは炎を操って攻撃し、それによってリーツァモンは落ちてしまった。だが、火の手が回っていない平地に落ちた事が不幸中の幸(さいわ)いだ。



「っ…ここなら大丈夫だろう……。ジェネラル、戦うぞ!」

「うん…!リロード、ピュアグロウ!……デジクロスッ!」





決意と覚悟





------(11/09/01)------
シキアモンは自分から嫌われ役を買って出ました´` デジクロスした所で次回に持ち越しってパターンが多いなーっと自分で思います(笑)

次回は遂に超進化しますが、皆が少年漫画に良くあるような熱い台詞を言います(予定)←





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